親子の関わり方

宿題をやらない子への“やる気”の育て方

kokomaru
女性
女性

毎日『早く宿題やりなさい!』って言ってるうちに、こっちの気力が先になくなっちゃって……。どう声をかけたらいいのか、もう分からなくなってきました。

ココフク
ココフク

“もっとちゃんとやらせなきゃ”って頑張るほど、親も子も消耗しちゃいますよね。今日は、『やる気』そのものを育てる関わり方を、一緒に整理してみましょう。

「言えば言うほど動かなくなる」「放っておくと本当にやらない」。
多くの親御さんが、この板挟みの中で疲れ切っています。

ただ、宿題を拒む子どもの頭の中をのぞいてみると、
「どうせやってもムダ」「また怒られるかも」「ゲームのほうがずっと楽しい」
といった、いくつもの気持ちがからまっていることがわかります。

ここでは、そんな子どもの心の動きを整理しながら、
心理学(自己決定理論)の視点から「やる気が育つ声かけ」と
それを支えるちょっとした仕組みづくりを紹介していきます。

「どうやってやらせるか?」ではなく、
「どうすれば、子どもが自分から“ちょっとやってみようかな”と思えるか?」
そのヒントを、一緒に探っていきましょう。

この記事でわかること

  • 宿題をやらない子どもの心の裏側(有能感低下・回避学習・即時快との競合)
  • 自己決定理論にもとづく「やる気」が育つ3要素(自律性・有能感・関係性)
  • シチュエーション別にすぐ使える、宿題に向かわせる声かけフレーズ
  • 時間・環境・ごほうびを整えて「続けやすくする」仕組み化のコツ
  • 「まず10分だけ」から成功体験を積み重ねていく具体的な始め方

🍀 宿題拒否の心理

子どもが宿題から逃げたくなるとき、頭の中ではだいたい次の3つがからみ合っています。

1:有能感の低下 ― 「どうせやってもムダ」

テストでミスが続いたり、同じ問題で何度もつまずいたりすると、
子どもは「自分は勉強が苦手だ」「頑張っても変わらない」と感じやすくなります。

  • 1ページ仕上げるのに人より時間がかかる
  • 消しゴムのあとが増えて、ノートがぐちゃぐちゃになる
  • きょうだいや友だちと比べて「自分だけ遅い」と感じる

こうした体験が積み重なると、
宿題=「できなさを突きつけられる場」として感じられてしまい、

「どうせやってもムダ」
「また怒られるだけだし」

という気持ちが強くなります。

ここで大切なのは、
“できない子”だからやらないのではなく、「できなかった経験」が多すぎて、有能感がすり減っている状態だと理解しておくことです。

2:回避学習 ― 「失敗=恥ずかしい・怒られる」の連想

宿題やテストで間違えたとき、強く叱られたり、からかわれたりした経験があると、
子どもの中では

間違えること = 恥ずかしい/怒られる

という結びつきができやすくなります。

すると、

  • 宿題を出さない
  • 「忘れた」「なくした」とごまかす
  • 机に向かう前からぐずぐずして時間を伸ばす

など、“恥ずかしさや不快さを避けるための行動”が増えます。

これは単なるワガママではなく、
「自分を守るために、失敗しそうな場面自体を避けようとしている」とも言えます。

3:即時快(ゲーム等)との競合 ― 目の前の楽しさのほうが勝つ

宿題は「やった瞬間に楽しい」ものではありません。
一方で、ゲームや動画、SNSは、

  • 今すぐ楽しい
  • すぐに反応やごほうびが返ってくる

という“即時の快感”をくれるものです。

人は子どもも大人も、
「今すぐ得られる小さな楽しさ」を、「先のほうにある大きなメリット」より強く選びがちです。
だから、

宿題:めんどう/先のメリットが見えにくい
ゲーム等:楽しい/今すぐ報われる

という構図になると、どうしても後者に引っ張られます。

ここを「根性がない」と切り捨ててしまうと、
子どもは「分かってもらえない」と感じて、親との距離も開きやすくなります。
“人間として自然な傾き”がある中で、どう環境を整えるかを考えるほうが建設的です。

次の章では、この心理をふまえて、
“怒鳴らずにやる気を育てるための声かけの原則”を整理していきます。

女性
女性

『サボってるだけ』って思ってたけど、実は“できなかった経験”とか、“怒られるのが怖い気持ち”が重なってたのかもしれませんね。

ココフク
ココフク

そうなんです。性格の問題にしてしまう前に、『この子はいま、どんなイヤな気持ちを避けようとしているんだろう?』と見てあげると、責め方より“支え方”のほうに目を向けやすくなります。

🍀 声かけの原則(自己決定理論)

子どもが「自分からやろうかな」と動きやすくなるためには、
自律性・有能感・関係性の3つが満たされていることが大切だと考えられています(自己決定理論)。
ここでは、その3つを宿題の場面に落とし込んでみます。

1:自律性を尊重する ― 「選べる余地」を残す

自律性とは、「自分で選んで動いている感覚」のことです。

「今すぐやりなさい」
「終わるまでゲーム禁止!」

というメッセージだけが強くなると、
子どもは「自分の意志は関係ない」と感じやすくなり、反発も起きやすくなります。

ポイントは、ルールは親が決めつつ、その中で子どもが選べる部分を残すこと。

宿題をするタイミング

「今やる? それともご飯のあとにする?」

取りかかる順番

「計算と漢字、どっちからやる?」

こうした“小さな選択”でも、
「自分で決めた」という感覚があるだけで、取りかかり方は変わってきます。

2:有能感を支える ― 「できた」を細かく積み上げる

有能感は、「やればできる」「前より少しできるようになった」という手応えです。

宿題を前に固まってしまう子は、
ここがすり減っていることが多いので、ハードルを下げて成功体験を細かく積む工夫が大事になります。

  • 1ページを「上半分」「下半分」に分けて区切る
  • 「全部やろう」ではなく「まず3問だけ」にする
  • 時間で区切り「10分だけ集中してみよう」と声をかける

そして、終わったあとに

  • 「ここまで終わったね」
  • 「さっきより早くできたね」
  • 「めんどくさくても始めたところ、すごいよ」

と、“結果”だけでなく“取りかかったこと自体”を言葉にしてあげる。

こうした関わりが、少しずつ「自分にもできる」という感覚を取り戻す助けになります。

3:関係性の安心 ― 「一緒にやるから大丈夫」の空気

関係性とは、「自分は大事にされている」「そばに味方がいる」と感じられることです。

宿題を一人でやらせようとすると、
不安が強い子ほど、集中できなかったり、すぐに別のことをしたくなったりします。

  • 親が隣の席で本を読む
  • 同じテーブルで家事やPC作業をしながら、ときどき声をかける
  • 「分からないところが出てきたら、すぐ呼んでね」とあらかじめ伝える

こうした“物理的な近さ”や“心理的な味方感”があることで、
子どもは「一人で戦っているわけじゃない」と感じやすくなります。

叱るために近くにいるというより、
「困ったら一緒に考える人」としてそばにいるイメージです。

次の章では、この原則を踏まえて、
そのまま真似できる「具体的な声かけフレーズ」を、場面別に見ていきます。

女性
女性

これまでは、とにかく『やりなさい』一択で押してた気がします……。少し言い方を変えるだけで、“自分でやろうかな”って気持ちを邪魔しないで済みそうですね。

ココフク
ココフク

はい。“選べる余地を残す(自律性)”“小さなできたを拾う(有能感)”“そばに味方がいると伝える(関係性)”。この3つを意識して声をかけるだけで、同じ一言でも子どもの受け取り方がガラッと変わっていきますよ。

🍀 シチュエーション別「使える具体フレーズ」

ここからは、さきほどの3つの原則をふまえて、
よくある場面ごとに“そのまま使える声かけ”をまとめていきます。

深く考えるより、「この場面ならこの一言」と、
いくつか“持ちセリフ”を用意しておくイメージです。

シーン1:そもそも机に向かわないとき

使える一言

「先に10分だけ一緒にやろう」

いちばんハードルが高いのは、「ゼロから机に向かう瞬間」です。
そこで、“全部やる”のではなく、スタートのハードルだけを下げる一言として使います。

「ゲームの続きの前に、先に10分だけ一緒にやろうか。」

「ご飯までちょっと時間あるし、10分だけここ進めちゃおう。」

「一人で」ではなく「一緒に」、
「全部」ではなく「10分だけ」と区切ることで、
子どもにとっての“最初の一歩”がぐっと軽くなります。

シーン2:どこから手をつけていいか分からず、ぼーっとしているとき

使える一言

「どこからなら始められそう?」

ドリルを前に固まっていたり、鉛筆を持ったまま動かないときは、
“やる気がない”というより、“どう始めればいいか分からない”場合も多いです。

そこで、命令ではなく「一緒に作戦を考える」スタンスで、こう聞いてみます。

「計算からなら始められそう? それとも漢字からにする?」

「このページの中で、どこからなら始められそう?」

親の頭の中では「全部やる」が前提でも、
スタート地点だけは子どもに決めてもらうことで、
「自分で選んで始めた」という感覚が生まれます。

シーン3:終わりが見えず、ダラダラ長引いてしまうとき

使える一言

「終わったら何する? 決めておこう」

終わりが見えないと、子どもは集中を保ちにくくなります。
そこで、“終わりの形”と“そのあとの楽しみ”を先に決めてしまう一言です。

「ここまで終わったら何する? 一緒におやつにする?」

「このページが終わったら、どの動画見る? 1本だけ決めておこうか。」

「10分がんばれたら、5分だけゲームタイムにしよう。」

ごほうびは特別なものでなくて大丈夫。
日常の中で続けられる、小さめの楽しみで十分です。

ポイントは、

宿題=ただの“しんどい時間”
ではなく、
宿題=“終わりが見えていて、その先にちょっとした楽しみがある時間”

というイメージに変えていくことです。

次は、こうした声かけを親子ともにムリなく続けられるようにするための「仕組み化」について整理していきます。

女性
女性

“やる気スイッチどこ?”って探すより、『この場面にはこの一言』って決めておいたほうが、私もアタフタしなくて済みそうです。

ココフク
ココフク

そうですね。完璧なセリフを探す必要はありません。『机に向かわないときはこれ』『終わりが見えないときはこれ』と、いくつかパターンを持っておくと、親御さん自身の心の余裕も大きく変わってきます。

🍀 仕組み化で“続けやすく”

声かけだけで毎回がんばろうとすると、親も子も疲れてしまいます。
ここでは、「やる気が出るのを待つ」のではなく、「やるしかない流れをゆるく作っておく」ための仕組みを考えていきます。

1:時間と場所を固定する ― 「いつものパターン」にしてしまう

毎回「今日はいつ宿題やるの?」から話を始めると、そこでまずエネルギーを消耗します。
そこで、“条件交渉”を減らすために、あらかじめ時間と場所を決めてしまうのがポイントです。

例:

  • 「平日は、夕食の前の20分は“宿題タイム”にしようか」
  • 「学童から帰ったら、まず10分だけ宿題 → そのあとおやつ」
  • 「宿題は、このダイニングテーブルのこの席でやる」

最初のうちはもちろんスムーズにはいきませんが、
「そういうものだ」というリズムができてくると、毎回説得する必要が少しずつ減っていきます。

「やる気があるからやる」のではなく、
「その時間になったら自然とそのモードに入る」ことを目指します。

2:見える化する ― チェックリストとタイマー

子どもにとっては、

「今日どこまでやればいいのか」
「どれくらい頑張ったのか」

が見えにくいと、達成感も得づらくなります。

そこでおすすめなのが、「やること」と「終わったこと」を見える形にする工夫です。

具体例

  • 今日やるページに付箋を貼っておく(そこまで終わればOK)
  • 「プリント・計算・音読」などを紙に書き出し、できたらチェックを入れる
  • 10分タイマー(キッチンタイマーやスマホ)を使い、「1回まわしたらシール1枚」など小さなごほうびとセットにする

チェックが増えていく、シールがたまっていく、という“見える変化”は、
「自分、けっこう頑張ってるじゃん」という感覚を支えてくれます。

3:ごほうびは「行動直後・小さく頻繁に」

ごほうびというと、つい

「テストで100点とったら○○買ってあげる」

のように、大きくて遠いものを設定しがちです。
ただ、習慣づけには、「行動のすぐあとに返ってくる、小さくて頻繁なごほうび」のほうが効果的です。

例えば、

  • 「10分集中できたら、5分だけゲーム」
  • 「宿題が終わったら、一緒に好きなおやつを食べる」
  • 「1日がんばれたらシール1枚、シールが5枚たまったら、週末に一緒に行きたい場所を選べる」

といった“ちょっとした楽しみ”で十分です。

大事なのは、

ごほうびが豪華かどうか
ではなく、

「がんばった行動そのもの」を親がちゃんと見て、言葉と行動で認めている

というメッセージが伝わることです。

では最後に、ここまでのポイントをぎゅっとまとめて整理していきます。

女性
女性

今までは毎回その場で説得しようとして、こっちがクタクタになってました。最初に時間や場所、シールのルールまで決めておけば、“言い争い”の回数も減らせそうですね。

ココフク
ココフク

その通りです。『声かけのセンス』だけに頼ると、親が燃え尽きてしまいます。決まった流れと小さなごほうびを用意しておいて、そこにひと言そえるだけでも、“続けられる宿題タイム”に近づいていきますよ。

🍀 まとめ

ここまで見てきた内容を、あらためて整理してみます。

1:やる気は「声かけ+設計」で育つ

宿題をやらないのは、子どもの性格が悪いからでも、親の努力不足でもありません。

  • 有能感がすり減っている
  • 「失敗=怒られる/恥ずかしい」と結びついている
  • 目の前の楽しさ(ゲーム等)が圧倒的に魅力的

といった心理が重なった結果、宿題が“避けたいもの”になっているケースが多い、というだけです。

だからこそ、
「根性論」ではなく、「心の仕組みに合った声かけ」と「続けやすい環境の設計」が大切になります。

2:鍵になるのは「自律・有能・関係」の3要素

自己決定理論の観点からは、

  • 自分で選べる感覚(自律性)
  • やればできるという手応え(有能感)
  • 親との安心できるつながり(関係性)

この3つが満たされるほど、
子どもは「やらされている」から「自分でやろうかな」に少しずつシフトしていきます。

声かけをするときは、

  • 「どこからなら始められそう?」と選択肢を渡す
  • 「ここまでできたね」と小さな達成を言葉にする
  • 「分からなかったらいつでも呼んでね」と味方でいることを伝える

といった形で、この3つを少しずつ満たしていくイメージです。

3:まずは「10分スタート」の成功体験から

いきなり「全部終わらせる」「毎日完璧に続ける」を目指すと、親子ともに息切れします。

最初の一歩としておすすめなのは、

「先に10分だけ一緒にやろう」

という小さなスタートラインを引くことです。

  • 10分だけ一緒にやる
  • できたらシール1枚 or 小さなごほうび
  • それを少しずつ積み重ねていく

この繰り返しの中で、子どもは

「やれば意外とできる」
「始めてしまえば、そんなに怖くない」

という感覚を、体で覚えていきます。

親も子も、うまくいかない日があって当然です。
それでも、「怒って終わり」ではなく、
少しずつ「一緒に工夫していく関係」を続けていければ、それ自体が子どもの心の土台になっていきます。

ABOUT ME
kokomaru
kokomaru
雑食系学習者
専門にとらわれず、興味のタネを見つけては掘り下げる「雑食系学習者」。 文系・理系の垣根を越え、心理学・哲学・教育・社会理論などをつまみ食いしながら、「人間を理解すること」をテーマに独自の視点で探究を続けています。

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