成人発達理論から見た“伸び悩み”の正体|仕事が停滞するときの3つのパターン

正直、“伸び悩んでる”なんて口に出したら、やる気がないと思われそうで……。でも、このまま今の仕事を続けていった先が、あまりイメージできないんです。

それって決して“贅沢な悩み”じゃないんですよ。むしろ、ある程度ちゃんとやれている人だからこそぶつかる壁で、『今まで通り』から一段ギアを変えるタイミングに来ているサインかもしれません。
仕事では、最低限の成果は出している。
評価も決して悪くないし、周りから見れば「きちんとしている人」に見える。
それなのに、ここ数年を振り返ると、どこか心のどこかでひっかかる。
「このまま同じ仕事を続けていて、何が積み上がっていくんだろう」
「成長していないわけじゃない。でも“伸びている実感”がない」
そんな、うまく言語化しづらい“伸び悩み感”を抱えていないでしょうか。
昇進や異動、資格取得のように、目に見えるステップアップがあるうちは、
「次はあれを目指せばいい」と、自分の成長をイメージしやすくなります。
一方で、ある程度まで役割をこなせるようになったあとにやってくるのは、
「ここから先、何を指標に成長を測ればいいのか分からない」という、
モヤモヤとした停滞感です。
成人発達理論では、人の「ものの見方」や「大事にしている価値観」は、
年齢ではなく“段階的な変化”としてゆっくりアップデートされていく、と考えます。
この視点から見ると、仕事で感じる“伸び悩み”は、
「次の段階へ移るための更新のお知らせ」のようなサインであることが少なくありません。
これまでのやり方でそこそこ成果は出る。
でも、どこかで「この延長線上に自分の未来を置きたくない」と感じ始める。
周囲の期待に応えるほど、「本当にこれでいいのか」という違和感が強くなる。
そのギャップが大きくなってきたとき、多くの人は“自分だけがおかしいのか”と悩みますが、
実はその裏側で、「役割に合わせて生きてきた自分」と
「自分の軸で生きたい自分」とが、静かにぶつかり合い始めています。
この記事では、成人発達理論の枠組みを使いながら、
- なぜ、一定のところで“伸び悩んだように”感じるのか
- そこにはどんな心理的な構造やパターンがあるのか
- 停滞を「次の段階への橋渡し」に変えるために、何から試せるのか
を整理していきます。
「自分はもう成長が止まったのでは?」ではなく、
「そろそろ“今までのやり方”を更新するタイミングなのかもしれない」と、
自分の伸び悩みを、少し別の角度から見直すヒントになれば幸いです。
この記事でわかること
🍀 伸び悩みは「段階移行のサイン」

役割順応(他者基準)から自律(自分基準)への過渡期
社会人の成長の初期は、多くの場合「役割に合わせて頑張る時期」です。
会社の方針、上司の期待、評価制度、暗黙のルール……。
それらをできるだけ正確に読み取り、「求められていることをきちんとこなす」ことで信頼を積み上げていきます。
このフェーズでは、
「上司にほめられるか」
「評価シートの項目を埋められるか」
「周りと比べて遅れていないか」
といった“他者の物差し”が、行動の基準になりやすくなります。
もちろん、これは悪いことではありません。
むしろ仕事を覚える段階では、「役割順応」がとても機能的に働きます。
ただ、ある程度経験を積み、「もう一通りのことはこなせる」と感じ始めたころから、
少しずつ別の問いが顔を出します。
「そもそも、自分は何を大事にして働きたいのか」
「この会社の物差しと、自分の中の物差しは同じなのか」
成人発達理論の言葉を借りると、
これは「他者基準で自分を組み立てていた段階」から
「自分の基準で生きようとする段階」への過渡期でよく見られる揺れです。
この時期の“伸び悩み”は、単に能力が不足しているというよりも、
「これまでの基準だけでは動けなくなっている」というサインであることが多いのです。
旧来の成功戦略が通用しなくなる痛み
もうひとつの特徴は、「今までうまくいってきたやり方」が、
だんだんと効かなくなってくる感覚です。
- とにかく量をこなせば評価された時期
- 言われたことを正確にやれば「助かる」と感謝された時期
- 多少無理をしてでも引き受ければ「頼りになる」と見られた時期
こうした成功体験を持っている人ほど、
同じパターンを続けることで何とか道を切り開こうとします。
しかし、年次が上がり、任される仕事の質や範囲が変わってくると、
「量をこなす」だけでは回らなくなったり、
「何でも引き受ける」ことで逆に自分の首をしめてしまったりします。
その結果として、
- 頑張っているのに、前ほど評価が伸びない
- むしろ「仕事を抱え込みすぎ」と指摘される
- チーム全体の視点で考えることを求められ、戸惑う
といったギャップが生まれます。
ここで生じるのは、“能力不足”というより
「成功戦略のアップデートを迫られている痛み」です。
これまで通じてきたやり方を手放すことは、
自分の頑張りや実績を否定するように感じられるため、とても怖い作業でもあります。
価値の衝突(安定 vs 自由)の表面化
さらに厄介なのは、「安定」と「自由」という、
どちらも大事な価値がぶつかり合い始めることです。
一方では、こうした思いがあります。
- 給与や福利厚生、勤務地など、生活を支える基盤は大事にしたい
- 今の職場で築いてきた人間関係や信頼を壊したくない
- 家族のことを考えると、大きなリスクは取りづらい
もう一方では、こんな願いも同時に膨らんできます。
- この仕事は「安定」はあるけれど、自分の好奇心を満たしていない気がする
- 今の評価基準だけに沿って生きていると、自分の軸が弱くなっていくように感じる
- もっと裁量のある仕事や、自分で方向性を決められる環境で試してみたい
「安定を取るか、自由を取るか」と、
あたかも二者択一のように感じてしまうと、
どちらに決めても必ず「選ばなかったほう」への未練や後悔がつきまといます。
成人発達理論的には、これは
「他者や組織の価値に自分を合わせてきた自分」と
「自分なりの価値観で選び取りたい自分」との衝突としても説明できます。
ここで大事なのは、
「自分は優柔不断だ」「覚悟が足りない」と責めることではなく、
むしろこの葛藤そのものが、段階移行のプロセスでよく見られる現象だと理解することです。
伸び悩みとして体感される停滞感の裏には、
- 基準のアップデート
- 成功戦略の見直し
- 価値の優先順位の組み替え
といった「内側の再設計」が静かに進みつつあります。
それを“異常”ではなく“変化のサイン”として捉え直せるかどうかが、
この先の一歩を踏み出すうえでの重要な土台になります。

今までのやり方で評価もされてきた分、『この路線を手放していいのか』ってすごく怖いですね。伸び悩みって、やっぱり自分の能力不足なんじゃないかって思ってしまいます。

能力が足りないというより、“同じ基準のままでは次のステージに進めなくなっている”状態に近いですよ。『何ができないか』ではなく、『どんな前提のまま走ってきたのか』を見直すタイミングに来ている、と捉えてみると少し違った景色が見えてきます。
🍀 よくある「伸び悩み」の停滞パターン

段階移行のサインとして「伸び悩み」を捉えられるようになると、
次に見えてくるのは「どこで足踏みしているのか」というパターンです。
ここでは、成人発達理論の視点からよく見られる3つの停滞パターンを整理してみます。
自分はどこにハマりがちか、軽くチェックしながら読んでみてください。
過剰適応タイプ:期待に応えるほど迷子になる
一つめは、「期待に応える力」が高い人ほど陥りやすいパターンです。
- 上司や先輩の指示を、きちんと汲み取って動ける
- 部署全体の空気を読み、求められている役割を察して立ち回れる
- 周囲から「助かる」「頼りになる」と言われることが多い
こうした強みを持っている人は、キャリアの前半では重宝されます。
ところが年次が上がるにつれて、こんな違和感が出てきます。
- 「結局、自分は何をしたいんだっけ?」
- 「誰の期待に応えるべきなのか分からなくなってきた」
- 「どの方向に頑張ればいいか、軸が見えない」
周囲の期待に敏感であるほど、部署の事情・上司の都合・会社の方針など、
“守るべきもの”がどんどん増えていきます。
その結果、「全員にとってちょうどいい選択」を探そうとして疲れ果て、
自分の意思が後回しになっていくのが、このパターンの特徴です。
成人発達理論の視点では、
「他者の期待を調整しながら自分を保とうとする」段階でよく見られる停滞です。
ここで必要になるのは、
“誰の期待にも等しく応える”ことをやめていく勇気でもあります。
独善化タイプ:自分の正しさに固着してしまう
二つめは、一見するとさきほどのパターンと正反対に見える「独善化」のパターンです。
- これまでの経験から、「自分なりの正解パターン」を確立している
- そのやり方で成果を出してきた自負がある
- チームの方針や上司の指示に、「それは違う」と感じることが増えている
ここまでは、ある意味で自然な成長の流れです。
ですがこの状態が行きすぎると、次のような形で停滞が現れます。
- 人の話を聞きながらも、心の中でずっと「いや、それは違う」と反論している
- 「どうせ分かってもらえない」と最初から諦めてしまう
- 周囲の事情や制約を軽視した提案になってしまい、浮いてしまう
成人発達理論的には、
「自分の価値観や信念を獲得し始めた段階」で起こりやすい行きすぎた形です。
“自分の軸を持つこと”自体は大切ですが、
それが「他者の視点や状況を取り込めない頑固さ」と結びついてしまうと、
結果的に、望む変化を起こしにくくなってしまいます。
このパターンにいるとき、本人の内側では
「自分のほうが現場を分かっているのに、なぜ理解されないのか」
というフラストレーションが蓄積しやすく、
“自分の正しさを証明すること” にエネルギーの多くを使ってしまうのが特徴です。
回避タイプ:決めきれず、動き出せない
三つめは、「分かってはいるけれど、決めきれない・動き出せない」パターンです。
- 転職、異動、資格取得、新しいプロジェクト…色々な選択肢を調べてはみる
- どの選択肢にも一長一短が見えてしまい、「もっと情報を集めてから」と考える
- 気づくと数ヶ月〜数年、同じ悩みを頭の中でぐるぐるさせている
このパターンにいるとき、頭の中ではかなりクリアに状況を分析できています。
「この職場に残るメリット・デメリット」
「別の道に進むときのリスク」
などを、冷静に並べて考えることもできます。
それでも動けない背景には、
- 失敗したときに背負うコストへの不安
- 「今の環境を手放すこと」への怖さ
- 自分の選択を、後から誰かに責められるイメージ
などが絡んでいることが多いです。
成人発達理論の観点では、
「自分の価値観で選択したい」という欲求が育ってきている一方で、
まだ「外部の評価」や「これまでの物語」から完全には自由になれていません。
そのため、
「どの選択肢も、誰かから見たら“間違い”に見えるかもしれない」
という不安から、決断を先送りし続けてしまうのです。
結果として、“何も選ばないこと”が、暗黙の選択になってしまいます。
これら3つのパターンは、
どれか一つにきれいに当てはまるというより、
状況や時期によって行き来することが多いです。
大事なのは、「自分はダメだ」と評価することではなく、
- 自分はどのパターンにハマりやすいのか
- そのパターンが、どんな“守りたいもの”から生まれているのか
を理解していくことです。

過剰適応も独善化も回避も、どれも“あるある”すぎて笑えないです……。こうやってパターンで見てしまうと、余計に『自分はダメだな』って落ち込みそう。

パターンが見えてきたのは、“自分を責める材料”じゃなくて“設計図が少し読めるようになってきた”合図ですよ。『どのパターンになりやすくて、その裏で何を守ろうとしているのか』まで見え始めたら、もう半歩くらい次の段階に足を踏み入れていると思って大丈夫です。
🍀 移行を促すための具体的な実践

ここまで見てきたように、“伸び悩み”は多くの場合、
内側で起きている「基準のアップデート」や「価値の組み替え」が表面化した状態です。
とはいえ、頭で理解しただけでは、日常はなかなか変わりません。
ここからは、段階移行をじわじわ促すために、
今日からでも試しやすい3つの実践を整理してみます。
価値観の再定義:「やること」ではなく「やらない基準」を決める
キャリアの前半は、「何ができるか」「どれだけやれるか」が問われがちです。
その延長で、伸び悩みを感じたときも、
- 「新しいスキルを身につけなきゃ」
- 「もっと勉強しなきゃ」
と、“足し算”で解決しようとしがちです。
しかし、段階移行のタイミングで重要になるのは、
これ以上は引き受けない/もうやらないことを決める側の基準です。
たとえば、次のような問いから始めてみます。
- 「今の自分にとって、“絶対に守りたいもの”は何か」
(健康、家族との時間、集中して取り組むテーマ など) - 「そのために、どんな仕事の引き受け方は“やらない”と決めるか」
(深夜残業前提のタスクは原則断る、属人的な丸投げは引き受けない など)
ポイントは、「やらない行動」のリストを作ること自体が目的ではなく、
自分の価値観を言語化し、日々の選択に反映させる練習にすることです。
具体的には、こんなミニステップがおすすめです。
- 紙やメモアプリに「今、大事にしたいものベスト3」を書き出す
- それを守るために、「今後1ヶ月、“やらない”と決めること」を3つだけ書く
- その3つに関しては、上司や同僚とも共有できそうな範囲で言葉にしてみる
過剰適応タイプの人にとっては、
これは「全員の期待に応え続ける」パターンを少しずつ手放す練習になります。
決して“わがままになること”ではなく、
自分の軸を明示することで、かえって周囲もあなたに頼みやすくなることが多いです。
境界線の設定:時間・人・情報の「断捨離」
次に、日常の中で「どこまでを自分の責任範囲とするか」という境界線を、
時間・人・情報の3つのレイヤーで引き直してみます。
時間の境界線
- 残業する日の“上限時間”を自分なりに決める
- 「一人で抱える時間」と「チームで相談する時間」の目安を決める
- 集中時間(会議を入れない時間帯)を、週に数コマだけでも先にカレンダーに確保する
人との境界線
- 自分一人では決められないこと/決めるべきでないことを明確にする
- 「相談には乗るが、最終決定は本人に返す」ラインを意識する
- すべての相談にフルコミットせず、「ここまでなら一緒に考えます」と範囲を区切る
情報の境界線
- 必要以上にSNSや社内チャットに張り付きすぎない
- 追うニュースやメルマガ、業界情報源を「本当に必要なもの」に絞る
- 「見ておいたほうがよさそう」という不安ベースの情報摂取を見直す
情報の流入量が多すぎると、
「もっと調べてから」「まだ条件がそろっていない」と、
決断回避パターンを強化してしまうことがあります。
今の自分の役割で本当に必要な情報はどれかを意識して絞り込むことは、
決める力を取り戻す一歩になります。
新しい役割の「小さな受託」:ミニ・リーダー体験を増やす
段階移行のプロセスでは、
「これまでの役割」だけで生きるのをやめて、
「新しい役割」を試しに引き受けてみることが、非常に重要になります。
ここで言う「新しい役割」とは、必ずしも「管理職になる」ことではありません。
むしろ、次のような“小さなリーダー体験”の積み重ねです。
- 定例ミーティングで、1つの議題だけファシリテーションを担当してみる
- 小規模な業務改善(チェックリストの見直し、マニュアル刷新など)を提案し、最後までやりきる
- 新人や後輩に対して、「教える」「フォローする」時間を意識的にとる
ポイントは、
- いきなり大きなポジションを狙わない
- 期間と範囲を絞った「ミニプロジェクト」として設計する
ことです。
たとえば、
- 「この3ヶ月は、部署の中で“引き継ぎのやり方”を改善する役をやってみよう」
- 「次の四半期は、チーム内で“新人フォローの仕組み”を試しに作ってみよう」
といった具合に、自分なりの“実験テーマ”を設定します。
実践のたびに、
- 始める前に「ねらい」と「想定している価値」をメモする
- 終わったあとに「うまくいった点/うまくいかなかった点」と
「自分の価値観にフィットしたかどうか」を振り返る
この「小さく引き受けて、小さく振り返る」サイクルは、
成人発達理論の文脈でいうところの
“自分で自分のあり方を設計していく力” を育てる実践そのものです。
過剰適応タイプの人にとっては、
「他人から振られた役割」ではなく「自分で選んだ役割」を経験することになり、
独善化パターンの人にとっては、
「他者を巻き込みながら、現実とすり合わせていく感覚」を取り戻す練習になります。
これら3つの実践は、どれも派手な変化を約束するものではありませんが、
続けていくほど、
- 「なんとなくの違和感」を、具体的な基準や行動に落とし込める
- 「伸び悩み」を、自分を責める材料ではなく“更新要求”として扱える
- 「次の段階に必要な筋力」を、日常の中で少しずつ鍛えていける
ようになっていきます。

価値観を言葉にしたり、“やらないこと”を決めたり、小さいリーダー役を試したり……どれも大事そうだけど、正直どこから手をつけたらいいか迷いますね。

いちばん簡単なのは、『今後1ヶ月はこれだけは守りたい』という“やらないことリスト”を一つ決めるところからです。完璧なプランを作るより、小さく決めて小さく試すほうが、結果的に“自分の軸ってこういう感じかも”と体感しやすくなりますよ。
🍀 変化を「見える化」する観測指標

成人発達の段階移行は、
「ある日を境にガラッと別人になる」というものではありません。
むしろ、日常の細かい選択やふるまいの中に、
じわじわと変化のサインが現れてきます。
そこでここでは、
自分がどのくらい「次の段階」に足を踏み入れつつあるのかを
ざっくり確認するための“観測指標”を3つ取り上げます。
これは「できている/できていない」を採点するものではなく、
自分の変化を、少し客観的に眺め直すためのものとして使ってもらえればと思います。
「NO」と言える頻度が少しずつ増えているか
最初の指標は、「NOと言える場面が増えてきたかどうか」です。
キャリアの前半は、とにかく「YES」と言うことで
信頼を積み上げてきた人も多いはずです。
- 「やっておくよ」と残業を引き受ける
- 急な頼まれごとにも、なるべく応じようとする
- 本音では迷いがあっても、「大丈夫です」と答えてしまう
こうしたふるまいは、短期的には職場にとってありがたいものです。
ただ、段階移行のタイミングでは、
「すべてにYESと言うこと」がむしろ成長のブレーキになる場面も増えてきます。
ここでのポイントは、
「NOと言えるかどうか」そのものよりも、
- NOを選ぶ基準を、自分の言葉で説明できるか
- 誰かを否定するのではなく、「自分の優先順位」を理由にできるか
という質のほうです。
たとえば、
- 「この時期は、既存プロジェクトの品質確保を最優先にしたいので、
新規のタスクは一度整理させてください」 - 「引き受けたい気持ちはあるのですが、自分が抱えている範囲を超えるので、
別のメンバーも含めて一緒に検討させてもらえませんか」
といった形で、
“関係を壊さないNO”を出せるかどうかが、一つの目安になります。
小さなメモで構わないので、1〜2ヶ月ほど、
- 本当はNOと言いたかったのにYESと言った場面
- 逆に、勇気を出してNOと伝えた場面
を書き留めてみると、自分の変化が見えやすくなります。
学びを外に出しているか(発信・教える)
二つめの指標は、「学んだことを外に出す機会」が増えているかどうかです。
- ノートや日記に、自分なりの気づきを言葉にして書き残す
- チームの共有ミーティングで、小さな学びを一つだけ共有する
- 後輩や同僚に、「自分がつまずいたポイントと、その乗り越え方」を伝えてみる
こうした行為は、単なるアウトプット以上の意味を持ちます。
成人発達理論の観点では、
自分の経験や考え方を一度“外に出し”、
それを見直すことで、ふだんの自分を組み直していくプロセスが重視されます。
頭の中だけで考えているときは、
- 「なんとなくモヤモヤする」
- 「うまく言えないけれど、違和感がある」
としか認識できなかったことも、
文章や会話の形で外に出してみることで、
- 「自分は、こういう価値観を大事にしているのかもしれない」
- 「このパターンになると、いつも同じところでつまずいているな」
といった“自己理解”に変わっていきます。
ここで大事なのは、
完璧な発信にしようとしないことです。
- 社内チャットに1〜2行の気づきを書く
- 個人のメモとして、週に一度「今週の学び3つ」を箇条書きにする
- 信頼できる同僚と、月に一度「お互いの最近の学び」を15分だけ話す場を持つ
この程度のシンプルなところから始めても、
「経験をただ流してしまう」のと比べて、
心の中で起きている更新プロセスが加速しやすくなります。
不確実さの中に「しばらく留まる」ことができるか
三つめの指標は、
「答えがすぐには出ない状況」にどれだけ留まっていられるか、です。
- 部署の今後の方針が完全には固まっていない
- 転職するか、このまま残るか決めきれていない
- 新しい役割に挑戦するかどうか、迷いがある
こうした“不確実な状態”に直面したとき、
人はどうしても「早くどちらかに決めてしまいたい」という衝動に駆られます。
あるいは、逆に「何も考えないまま、いつものルーティンだけ続ける」ことで、
不安から目をそらそうとすることもあります。
段階移行のプロセスでは、このどちらでもなく、
「まだ決めきれない状態のまま、状況と自分の内側の両方を観察し続ける」
という時間を持てるかどうかが、大きな意味を持ちます。
具体的には、次のような問いを、
1〜3ヶ月程度かけて繰り返し自分に投げてみるイメージです。
- 「今の働き方の、短期的なメリットと、5年後のリスクは何だろう」
- 「もし、このままの延長線上でキャリアを続けたら、どんな未来が見えるか」
- 「完全に情報がそろうことはない前提で、“現時点で一番納得できる選択”は何か」
ここでの観測指標は、
「迷っている時間の長さ」そのものではなく、
“迷っている期間の質”です。
- 不安を紛らわすためだけに、ひたすら情報を集め続けているのか
- それとも、「自分が何を大事にしたいのか」を言語化する材料として、
情報や経験を使えているのか
この違いを意識できるようになると、
「答えが出ないからダメだ」という自己否定ではなく、
“不確実さと付き合う力”そのものが、次の段階の能力の一部であると
受け止めやすくなります。
これら3つの指標は、
どれも「やろうと思えば、今日から少しずつ意識できるもの」です。
- NOと言える頻度が、去年よりほんの少し増えたか
- 学びを外に出す場面を、月に1回から2回に増やせたか
- 不確実さの中で、「とりあえずの決めつけ」で蓋をする前に、
少しだけ立ち止まる余裕を持てたか
こうした微妙な変化を拾い上げていくことが、
「伸び悩み」を「停滞」ではなく「更新のプロセス」として
実感していくための手がかりになります。

NOを言えた回数とか、学びを外に出せた回数なんて、たいしたことない気がしていました。でも、そういう細かい変化も“段階が動いているサイン”になるんですね。

大きな昇進や転職だけが成長じゃなくて、“去年の自分より、少しだけ違う選び方ができたかどうか”も立派な指標なんです。日記やメモに小さく記録していくと、『あれ、自分けっこう変わってきてるかも』とあとから気づけるようになりますよ。
🍀 伸び悩みを「更新要求」として扱う
ここまで見てきたように、社会人として感じる“伸び悩み”は、
単なる「成長の止まり」でも、「自分の限界」でもありません。
むしろ成人発達理論の視点から見ると、
それはしばしば「これまでの生き方や働き方を、次の段階に合わせて更新してください」
というサイン=更新要求として現れます。
「伸び悩み=自分がダメ」ではなく「更新が必要」という見方に変える
まず一番大事なのは、
伸び悩みを感じたときに、すぐに
- 「自分はここまでなのかもしれない」
- 「周りと比べて成長が遅いのでは」
と自己評価の問題にしてしまわないことです。
この記事で扱ってきたように、その背景には
- 他者基準から自分基準へのシフト
- 旧来の成功パターンが効かなくなってくる痛み
- 安定と自由という価値の衝突
といった、「内側の構造」が動き始めている兆しが隠れています。
“自分がダメだから伸び悩んでいる”のではなく、
“これまでの前提のままでは進めない段階に来ている” と見立てを変えるだけでも、
そこからの一手がまったく違ってきます。
カギは「手放し」と「選び直し」
次に必要になるのは、
「これまで自分を支えてきたもの」を、一部手放しながら、
「これからの自分に必要な基準」を選び直していくことです。
具体的には、
- 何でも引き受けてきた働き方から、
「やらないこと」「NOと言うライン」を決めていくこと - 他人の期待に過剰に合わせるスタイルから、
「自分は何を大事にしたいのか」を言語化していくこと - 正しさの主張にエネルギーを注ぐのではなく、
「どんな現実をつくりたいのか」という視点を少しずつ育てていくこと
などが挙げられます。
これは、
“これまでの頑張りを捨てる”という話ではありません。
むしろ、そこから得てきた経験や力を、
「次のフェーズでどう使い直すか?」
という問いに乗せ替えていく作業です。
小さな役割から「次の段階への橋」をかける
最後に、段階移行を現実の行動レベルに落とすためには、
いきなり大きく環境を変えるのではなく、
小さな新しい役割を試しに引き受けてみることが有効です。
- 部署内のミニ改善プロジェクトをリードしてみる
- 新人フォローやOJTの設計に、少しだけ主体的に関わってみる
- 会議の一部だけでもファシリテーションを担当してみる
そうした“小さなリーダー体験”の積み重ねこそが、
- 自分の価値観を実際の行動に反映させていく練習
- 周囲との関係を保ちながら、自分の軸を立てる練習
になっていきます。
その過程で、
- NOを伝えられる場面が少し増えた
- 学びを外に出す習慣がついてきた
- 不確実さの中に、以前より長く留まれるようになった
といった変化が見え始めたとしたら、
それはすでに「次の段階への橋」を渡り始めているサインと言えるでしょう。
伸び悩みを感じるとき、人はどうしても
「早く答えを出さなければ」「何か大きな決断をしなければ」と焦ってしまいます。
けれども成人発達の視点から見れば、
伸び悩みは、“今まで通り”を続けられなくなった自分からの、大事なフィードバックです。
- 自分の基準を再定義すること
- 境界線を引き直すこと
- 小さな役割を通じて、新しいあり方を試してみること
この3つを意識しながら、一気に変えようとせず、
「半年〜数年かけて、自分のOSをアップデートするプロセスなんだ」と
少し長い呼吸で付き合っていくことが、
社会人としての“第二ラウンド”を形にしていく土台になっていきます。
