1on1で主体性を引き出す質問の型

1on1で『どうしたい?』って聞いても、部下が黙るか抽象的で…。結局、私が選択肢を出して“答え”まで言ってしまいます。これって私の聞き方が悪いんですか?

聞き方というより、“意思決定の座”があなた側に寄っているのがしんどさの正体かもしれません。質問は相手を動かす言葉じゃなく、本人が“決める材料”を揃える手順です。型で戻せます。
1on1や育成面談で「どうしたい?」「何が課題?」と聞いているのに、返ってくるのは抽象論か沈黙。結局こちらが選択肢を並べて、最後は“答え”まで渡してしまう──そんな場面、管理職の現場では起きがちです。
ここで大事なのは、「質問=相手を動かすための言葉」ではないことです。質問の役割は、相手の頭の中にある材料(目的・前提・不安・選択肢)を整理し、意思決定の主導権を“本人側”に戻すための道具にすること。うまく設計された質問は、相手の納得感と行動を同時に立ち上げやすくします。一方で、質問の形を間違えると、誘導や詰問になって関係性も主体性も削ってしまいます。
この記事では、管理職が現場で再現できる「型」と「問いの言い回し」をセットで整理します。会議でも1on1でも、短時間で“次の一歩”までつなげることを狙います。
この記事でわかること
- 部下の主体性が止まりやすい「質問の落とし穴」と回避の考え方
- 意思決定を本人に戻すための質問フレーム(2つの型)
- 現場でそのまま使える質問例(状況整理→選択→一歩)
- 誘導・詰問にならないためのチェックポイント
- 「明日30分の最小行動」で面談を締める手順
🍀質問が効く理由

質問は「部下を説得する言葉」ではなく、「本人が自分で決めるための材料を整える手順」です。
意思決定の主導権を本人に戻す
管理職が面談で苦しくなる典型は、部下の話を聞いた結果、最後に「結局どうする?」を自分が引き取ってしまう形です。ここで起きているのは、能力不足というよりも「意思決定の座」が管理職側に寄っている状態です。
質問の価値は、結論を引き出すことではなく、意思決定に必要な要素を“本人の口”から組み立て直すことにあります。たとえば、次の4つが本人の言葉で揃うと、管理職が背負う量が減ります。
- 何を達成したいか(目的)
- どんな選択肢があるか(選択肢)
- 何を基準に選ぶか(判断基準)
- まず何をするか(次の一歩)
この順序で整理できると、管理職は「答えを与える人」ではなく、「決めるための場を設計する人」になれます。結果として、部下側も“やらされ感”ではなく「自分で決めた感覚」を持ちやすくなります。
仮説思考を促し、学習速度が上がる
主体性が出る人ほど、最初から正解を持っているわけではありません。むしろ「仮の答えを置いて、小さく試して、ズレを直す」が速い。質問は、この“仮説→検証”の回転をつくるのに向いています。
管理職がやりがちな支援は、正しい手順や模範解を先に示すことです。これは短期的には速い一方で、部下が「正解待ち」になりやすい。対して、質問で仮説を引き出すと、部下は次のように動きやすくなります。
- 状況を自分の言葉で切り分ける(何が起きているか)
- 仮の打ち手を複数出す(選べる状態をつくる)
- 判断基準を置く(何を優先するかを決める)
- 小さく試す(結果から学ぶ前提にする)
つまり質問は、“正解を当てる”よりも“学びを進める”方向に面談を寄せます。面談が「確認と報告の場」から「思考の更新と次の一歩を決める場」に変わっていきます。

でも、こちらが答えを言った方が早いんですよね…。現場はスピードも必要だし。

短期の速さは出ます。でも“次も聞けばいい”が積み上がると、結局あなたが詰まります。質問で仮説を出してもらうと、部下は小さく試して学ぶモードに入る。結果的に、あなたの負荷が減ってスピードも戻ります。
🍀基本フレーム

質問力はセンスではなく、順番と型で安定します。
What → So what → Now what の順で聞く
面談が噛み合わないとき、多くは「いきなり解決(Now what)」に飛んでいます。まずは事実(What)と意味づけ(So what)を通ってから、次の一歩(Now what)に進むほうが、相手の納得感が落ちにくいです。
- What(何が起きている?):事実・状況・制約・関係者を整理する
- So what(それは何を意味する?):課題の核心、影響、優先順位を言語化する
- Now what(次に何をする?):選択肢を出し、決めて、動く
この順番のメリットは、管理職が“説得”に寄りにくいことです。事実→意味→行動の流れに乗せるだけで、面談が「議論」から「整理」に変わります。
目的 → 選択肢 → 判断基準 → 次の一歩
会話が前に進まない原因は「考えが足りない」ではなく、「意思決定の部品が揃っていない」ことが多いです。
- 目的:何を達成したいのか(ゴール、成功条件)
- 選択肢:やり方は何があるのか(最低でも2〜3案)
- 判断基準:何を優先して選ぶのか(品質・安全・期限・コスト・学び等)
- 次の一歩:明日から何をするのか(最小の行動に落とす)
この型のポイントは、管理職が「選択肢」を先に渡さないことです。先に案を出してしまうと、部下の思考は“採点待ち”になりやすい。まずは本人に案を出してもらい、必要なら管理職が追加案を足す、という順が崩れにくいです。
なお、コーチングでよく使われる型(例:GROWなど)とも考え方は近く、難しい理論というより「面談を前に進めるための段取り」として扱うのが実務的です。
2つの型の使い分け
混乱しやすいときは、「状況整理にはWhat→So what→Now what、意思決定には目的→選択肢→判断基準→次の一歩」を当てはめると迷いが減ります。

フレームが2つあると、面談中に迷いそうです。どっちを使えば…?

迷ったら分けてください。会話が散ってるなら“状況整理”として What→So what→Now what。決めきれないなら“意思決定”として 目的→選択肢→判断基準→次の一歩。役割が違うだけで、競合しません。
🍀現場で使える質問集

質問は「美しい言い回し」より、「次の思考が出る形」になっているかが重要です。
「成功の状態を一文で言うと?」
会話が散らかるとき、最初にズレているのはゴールです。「何ができたら成功か」を一文にすると、本人の判断基準が見えます。
- 「この件、成功って一文で言うとどうなる?」
- 「“終わった”の定義を一文で言うなら?」
- 「関係者に説明するとしたら、ゴールは何?」
ここで管理職がやりがちなのは、ゴールの文章を添削して正解に寄せることです。まずは“本人の言葉”で出してもらうほうが、後の行動が軽くなります。粗くてもOKにすると、思考が出やすいです。
「3案出すなら?採点基準は?」
選択肢が1つしかない状態では、主体性は出にくいです。最低3案を出してもらうと、「考える」から「選ぶ」に切り替わります。
- 「いま思いつく範囲で3案出すなら?」
- 「その3案を採点するなら、基準は何にする?」(=何を優先して選ぶ?)
- 「基準に点数をつけるなら、何点配分にする?」
“採点基準”を聞くと、本人の価値観(何を大事にしているか)が浮きます。すると管理職は「それは違う」ではなく、「その基準だと、この案が上がるね」と、整理の役に回りやすくなります。
「明日30分で進める最小行動は?」
面談が「良い話で終わる」だけだと、次回まで何も変わりません。最後は、最小の行動に落とす質問が効きます。
- 「明日30分だけ使えるなら、最小で何を進める?」
- 「一歩目が軽くなるように、やることを“1つ”に絞ると?」
- 「それを実行したら、何が分かる(または何が前に進む)?」
この問いの狙いは、完璧な計画ではなく“検証可能な一歩”を作ることです。ACT的に言えば、価値(目的や優先したい基準)に沿う行動を、小さく確実に増やす設計に近い考え方です。
15分1on1に落とす(例)
「時間が短いほど、型がないと雑談か詰問になりやすい」というのは現場あるあるです。
- 0〜2分:What(事実・状況を短く)
- 2〜7分:So what(核心・影響・優先順位)
- 7〜12分:目的→選択肢→判断基準(決める材料を揃える)
- 12〜15分:Now what(明日30分の最小行動+次回確認ポイント)

『3案出して』って言うと、部下が『無理です』って固まりそうで怖いです。

“正解を当てる試験”に聞こえると固まります。『いま思いつく範囲でいい』『荒くていい』を先に添えると出やすいです。出た案は採点せず、まず“基準(何を優先するか)”を一緒に言語化する。そこまで行けば、次の一歩が作れます。
🍀NG質問/良い質問

質問は便利なぶん、形を誤ると「考えさせる」ではなく「追い詰める」になりやすい領域です。
誘導・詰問はNG/中立・具体が◎
NGになりやすいのは、結論が決まっている質問です。本人は「答え合わせ」を感じると、思考を止めるか、防御的になります。
NGの例(誘導・詰問になりやすい)
- 「それって、要するに準備不足だよね?」
- 「なんでできなかったの?」
- 「普通こうするよね?なぜやらないの?」
良い形(中立・具体に寄せる)
- 「どこで詰まった?“事実”としては何が起きた?」
- 「選択肢は他にある?いま出せる範囲でいい」
- 「判断基準は何を優先したい?」
違いは、“評価”を含むかどうかです。評価が混ざると、部下は「守る会話」になります。中立な問いにすると「整理する会話」になりやすい。管理職が担うべきなのは、正しさの提示よりも、思考の整理と次の一歩の設計です。
感情 → 事実 → 行動の順に聞く
面談では、部下がすでに緊張していることが多いです。いきなり「何をするの?」に入ると、心理的には“詰められた”と感じやすい。まずは感情を短く扱い、そのあと事実、最後に行動の順にするほうが噛み合います。
- 感情:「いま一番引っかかってるのは何?」「不安があるとしたらどこ?」
- 事実:「実際に起きたことを時系列で言うと?」「制約は何がある?」
- 行動:「次に試す最小行動は?」「誰に何を確認する?」
ここでの感情は、深掘りしてカウンセリングをするという意味ではありません。面談の目的が業務の前進なら、感情は“思考を止める要因”として短く可視化し、事実と行動に戻すのが実務的です。マインドフルネス的に言えば、反応の自動化(焦り・防御)に気づいて一呼吸置き、事実へ戻るための手順として使います。

正直イラッとしてるとき、つい『なんでできないの?』って言いそうになります…。

その気持ちは自然です。ただ、その一言は相手を“守る会話”にします。イラッとしたら、まず感情を短く扱ってから事実へ戻す。たとえば『いま何が一番引っかかってる?』→『事実としてどこで止まった?』→『次に30分でやる最小行動は?』。中立の順番が、あなた自身の暴発も止めてくれます。
🍀まとめ
質問は、部下を「その場で納得させる」ための道具ではなく、本人が自分で考え、決めて、動くための環境をつくる技術です。
質問は“主体性のスイッチ”
主体性が落ちるとき、多くは「意思決定の座」が本人から離れています。質問の狙いは、正解を当てさせることではなく、目的・選択肢・判断基準・次の一歩を本人の言葉で組み直すことでした。これが揃うと、管理職が背負う量が減り、部下側の“自分で決めた感覚”が残りやすくなります。
型を持てば誰でもできる
質問力は才能というより、順番の設計です。まずは What → So what → Now what で整理し、意思決定は 目的 → 選択肢 → 判断基準 → 次の一歩 に落とす。この2つの型があるだけで、面談は「報告と説得」から「整理と前進」に変わりやすくなります。
最小行動で締める
面談の価値は、話の良さではなく行動の変化で決まります。最後は「明日30分で進める最小行動は?」で締め、次回はその結果から学びを更新する。これを繰り返すと、部下は“正解待ち”ではなく“仮説で動ける”方向に育っていきます。
