子供が言うことを聞かないときに効く“共感型フィードバック”

何回言っても同じことで叱ってばかりで……。私の言い方が悪いのか、この子にやる気がないのか、もう分からなくなってきました。

“叱る”が効いていないときって、言い方の問題だけじゃなくて、子どもの心の中で起こっていることも関係しているんですよ。一緒に整理してみましょうか。
「こんなに何回も注意してるのに、まったく響いてない気がする……」
子どもを叱ったあと、そんな虚しさだけが残ったことはありませんか。
たとえば、何度も約束しているゲームの時間。
今日も気づけばルールオーバーしていて、つい強めの口調で叱ってしまう。
その場では「ごめんなさい」と言うけれど、翌日には同じことのくり返し。
親としては「ナメられているのかな」「もっと厳しくしないとダメなのかな」と、だんだん声もきつくなっていきます。
一方で、叱られている子どもの側では、
「どうせまた怒られるだけだ」
「ちゃんとやろうと思ってるのに、うまくいかない」
「わかってくれてないのは大人のほうだ」
といった気持ちが渦巻き、心のシャッターを下ろしてしまうことも少なくありません。
すると、親がどれだけ言葉を重ねても、子どもの耳には「ただのノイズ」としてしか届かなくなっていきます。
今回の記事では、叱っても響かない状態から抜け出すための「共感型フィードバック」という視点を扱います。
「共感」と聞くと、「甘やかすこと」「何でも許すこと」をイメージする方もいるかもしれませんが、ここで扱うのはそうではありません。
- 子どもの感情を一度受け止める
- 事実を一緒に整理する
- 次にどう行動するかを具体的に決める
この3つをセットにした「声のかけ方」を身につけることで、
叱る回数を減らしつつ、守ってほしいルールはきちんと伝える、そんな関わり方を目指していきます。
「叱らない子育て」が正解なのではなく、
叱る・注意する場面で“どう伝えるか”を少し変えてみる。
そのためのヒントを、これから一緒に整理していきましょう。
この記事でわかること
🍀 子どもに叱りが「響かなくなる」3つの理由

恐怖で学習が止まる
強い口調で叱られたとき、子どもの心の中でいちばん先に立ち上がるのは「反省」ではなく、しばしば恐怖や不安です。
大人でも、上司に強く責められた瞬間、「次はどう改善しよう」よりも、「やばい、怒らせた」「もう失敗できない」という気持ちが前面に出てきますよね。
子どもにとっても同じで、「怒られた」という体験が強烈であればあるほど、頭の中はその記憶でいっぱいになります。そうなると、
- 何を怒られているのか
- どこを直せばいいのか
といった「学ぶべきポイント」に意識を向ける余裕がなくなってしまいます。
結果として、
「怒られた場面は覚えているのに、行動はほとんど変わらない」
という状態が起こりやすくなります。親から見ると「わざと繰り返している」ように見えますが、実際には「どう変えればいいかまで整理しきれていない」というケースも多いのです。
防衛で言い訳が増える
人は誰でも、自分が責められたと感じると、心のどこかで自分を守ろうとする反応(防衛)が働きます。
それは大人だけのものではなく、子どもにもごく自然に起こります。
「だって○○が先にやった」
「ちゃんとやろうとしてたのに」
「そんなつもりじゃなかった」
こうした言い訳のような言葉は、もちろん親から見ると「逃げ」に見えるかもしれません。
ですが、心理学的には「自分は完全に悪いわけじゃない」と自分を守ろうとする防衛反応として理解することもできます。
防衛が強く働いているとき、子どもの心のエネルギーは
自分を守ること:多め
行動を振り返ること:少なめ
くらいの割合になりがちです。
すると、どれだけ正しいことを伝えても、子どもの頭の中では
「やっぱり自分のことをわかってくれない」
「どうせ何を言っても怒られる」
というメッセージのほうが強く残ってしまい、かえって「親の話を聞きたくない」という気持ちが育ってしまいます。
抽象的で行動に落ちない
もう一つのよくあるパターンは、メッセージが抽象的すぎて、具体的な行動につながらないケースです。
「もっとちゃんとしなさい」
「しっかりしなきゃダメでしょ」
「いい加減にして」
こういった言葉は、親としては「生活全体の姿勢」を伝えたい気持ちから出てきます。
ですが、子どもの側から見ると、
「ちゃんと」って、具体的に何をどうすればいいの?
という疑問が残りやすくなります。
たとえば宿題であれば、
- 「まずはドリルを1ページだけ終わらせる」
- 「ゲームをつける前に、明日の持ち物チェックをする」
といったレベルにまで落としてあげないと、「次にどう動けばいいか」がイメージしづらいのです。
行動のイメージが持てないまま叱られ続けると、
「どうせまた怒られるだけ」
「自分は何をしてもダメだ」
というあきらめにつながりやすくなり、結果として行動変容も起こりにくくなってしまいます。

響かないのって、この子が“根性なし”だからじゃなくて、恐怖とか防衛とか、伝え方の問題も大きいってことなんですね。

そうなんです。『分かっててやらない子』というより、『どう変えたらいいかまで整理しきれていない子』という視点で見ると、関わり方も変わってきます。
🍀 共感型フィードバックの基本フレーム

ここからは、「叱っても響かない」状態から抜け出すための、具体的な声かけの流れを整理していきます。
ポイントは、次の3ステップです。
- 感情を受け止める(感情承認)
- 事実を一緒に整理する(事実確認)
- 次にどうするかを一緒に決める(次の一歩)
この順番で関わることで、子どもの「防衛モード」を少しずつ下げ、「考えるモード」「学ぶモード」に切り替えやすくなります。
感情承認 → 事実確認 → 次の一歩
まず大事なのは、いきなり注意や説教から入らないことです。
最初のひと言で「責められた」と感じるか、「話を聞こうかな」と思えるかが、子どもの反応を大きく左右します。
感情承認(気持ちを言葉にしてあげる)
「さっき怒られて、イヤな気持ちになったよね」
「ゲームやめるの、すごく名残惜しかったんだよね」
など、子どもの中にある感情に“名前をつけてあげる”イメージです。
「あなたの気持ちは見えているよ」というサインを出すことで、防衛が少しゆるみます。
事実確認(何が起こったのかを一緒に整理する)
感情を受け止めたあとで、
「さっきは、約束の時間を15分すぎてたんだよね」
「宿題より先にゲームをつけちゃったんだよね」
といった形で、事実レベルに話を戻します。
ここでは、「だからダメ!」「ちゃんとしなさい!」ではなく、「何が起こったか」を淡々と共有することが大切です。
次の一歩(次回どうするかを一緒に決める)
最後に、
「次はどうしようか?」
「次は、ゲームの前に何を終わらせておく?」
と、“次の一歩”を一緒に考えます。
ここで親がすべて決めて押しつけてしまうと、また「やらされている感」が強くなるので、子どもの意見を聞きながら決めるのがポイントです。
この「感情 → 事実 → 次の一歩」という流れを意識するだけでも、
叱るシーンが「責める時間」から、「一緒に問題をほどく時間」に少しずつ変わっていきます。
責めずに“困りごと”として扱う
共感型フィードバックでは、「悪い子を正す」ではなく、「一緒に困りごとを解決する」という姿勢が大事になります。
たとえば、
「なんでいつも約束が守れないの!」
ではなく、
「約束の時間になると、ゲームをやめるのがすごく難しいんだね」
と声をかけると、焦点が
「ダメな子」 → 「扱いが難しい状況」
へと移ります。
これは、子どもにとって次のようなメッセージになります。
「自分がダメなんじゃなくて、やり方がうまくいってないだけなんだ」
「一緒に工夫してもいいんだ」
すると、
「怒られないように隠す」
よりも
「どうすればうまくいくかを考える」
ほうに意識を向けやすくなります。
親の側も、「またダメだった」「ちゃんとしてくれない」というイライラから少し離れて、
“親子で同じチーム”として問題に向き合う感覚を持ちやすくなります。
選択肢を一緒に作る
最後のポイントは、子どもと一緒に“現実的な選択肢”を考えることです。
たとえば、ゲーム時間の問題なら、
「次は、ゲーム30分と45分なら、どっちなら守れそう?」
「宿題を先に全部やるか、算数だけ終わらせてからにするか、どっちにする?」
というように、親が用意した2〜3個の選択肢の中から選んでもらう形が使いやすいです。
ここでの狙いは、
- 子どもに「選んだ感覚」「自分で決めた感覚」を持ってもらう
- その結果として、「約束を守る責任感」を少しずつ育てていく
ことです。
もちろん、毎回きれいにいくとは限りません。
それでも、
- 感情を聞く
- 事実を整理する
- 現実的な選択肢を一緒に考える
というサイクルを重ねていくことで、
「怒られるから動く」から、「自分で考えて動こう」に、少しずつシフトしていく土台がつくられていきます。

感情 → 事実 → 次の一歩、って流れを意識するだけでも、叱る場面の空気が違いそうですね。

はい。“悪いところ探し”ではなく、“どう工夫するか”の会話に変わると、お互いの疲れ方も少し変わってきます。
🍀 すぐ使える「共感+行動」フレーズ集

【共感型フィードバック】の流れは、
感情承認 → 事実確認 → 次の一歩
でした。
ここでは、その流れの中でどんな言葉を使うと、子どもの心に届きやすくなるのかを、心理的な効果とセットで整理していきます。
「イヤな気持ちだったよね」
(感情承認のフレーズ)
まずは、感情を受け止めるための入口のひと言です。
「さっき、イヤな気持ちだったよね」
「急にゲーム切られて、モヤッとしたよね」
「注意されて、恥ずかしい感じもあったかな」
といった形で、子どもの感情に“名前をつけてあげる”イメージです。
【なぜ有効なのか】
子どもの防衛モードを下げる。
「イヤな気持ちだったよね」と先に感情を言葉にしてもらうと、子どもは
「責められるだけじゃないかもしれない」
と感じやすくなり、身構えが少しゆるみます。
「自分の感情は大事にされている」という安心感が生まれる。
これは、親子関係を支える“安全基地”になり、後から入ってくる注意や提案が受け取りやすくなります。
「自分の気持ちを言葉にしていいんだ」という感情の言語化の練習にもなる。
感情を言葉にできる子ほど、イライラや不安を「行動で爆発させる前」に扱いやすくなります。
【使うときのコツ】
- すぐに「でもね」で打ち消さない
- 声のトーンは落ち着きめに
- 子どもが「別にイヤじゃない」と返してきたら、「そっか、じゃあどんな気持ちだった?」と問い直す。
「ここまではできてた、次はどこから?」
(事実確認+次の一歩をつなぐフレーズ)
これは、
事実確認 → 次の一歩
の橋渡しをしてくれるフレーズです。
「ここまではちゃんとできてたよね。次はどこからやる?」
「漢字ドリルまでは終わってるね。次は何ページからいこっか?」
といった形で、できている部分をまず確認し、そのうえで“続き”を一緒に考える言い方です。
【なぜ有効なのか】
- 「全部ダメ」から「一部はできている」に認知が変わる
- 「責められる場」から「一緒に分析する場」へと空気が変わる
- “次に何をするか”を自分で選ぶことで、主体性・実行機能のトレーニングになる
【使うときのコツ】
- ほんの小さなことでも「ここまではできてた」を具体的に言う
- 「まだこれだけ?」という評価は飲み込む
- 「次はどこからやる?」と問いかけで終わる
「次は●●と▲▲のどっちでいく?」
(選択肢を一緒に作るフレーズ)
これは、
次の一歩を一緒に決める
を、具体的な選択肢として提示するためのフレーズです。
「次は、ゲーム30分と45分だったら、どっちでいく?」
「先に算数だけやってからゲームにするのと、ご飯のあとにまとめてやるのと、どっちがいい?」
「明日の準備、今やっちゃうのと、お風呂のあとにするのと、どっちでいこうか?」
親が許容できる範囲で、2〜3個の選択肢を用意して、その中から子どもに選んでもらいます。
【なぜ有効なのか】
- 子どもの自律性(自分で選んでいる感覚)を育てる
- 「親vs子ども」の構図を和らげ、「親子で決めたルール」という感覚をつくる
- 守れたときに「自分で選んだ約束を守れた」という成功体験になりやすい
【使うときのコツ】
- どの選択肢を選ばれてもOKなものだけを並べる
- 決められないときは、「じゃあ今回はお母さん(お父さん)のおすすめでいこうか」と助け舟を出す
- 決めたあとは、「じゃあ今日は●●でいくってことでOKね」と軽く言葉で確認する

こんなふうにフレーズで覚えておくと、『どう言えばいいか分からなくて結局怒鳴る』っていうパターンを減らせそうですね。

そうですね。全部完璧じゃなくて大丈夫です。まずは“よく使いそうなひとつ”だけ決めて、そこから増やしていくイメージで十分ですよ。
🍀 境界と一貫性が「安心できるルール」をつくる

共感型フィードバックは、「なんでも許す優しい声かけ」ではありません。
むしろ、守るべき線(境界)をハッキリさせることとセットにしてこそ、子どもの安心感や自律性につながっていきます。
ルールは少なく明確に
ルールが多すぎたり、内容があいまいだったりすると、子どもは次のように感じやすくなります。
「何を守れば怒られないのか分からない」
「昨日はよくて今日はダメって、どういうこと?」
こうした“読めない感じ”は、不安や反発のもとになります。
そこで大事なのが、
「本当に守ってほしいこと」だけに絞り、シンプルに言葉にすることです。
たとえば、
- ゲームは1日30分まで
- 夜9時になったらスクリーンオフ
- 明日の準備は寝る前までに終わらせる
など、数を絞って“具体的な行動レベル”で決めておくと、子どもにとっても分かりやすくなります。
「ここまではOK」「ここから先はNG」という線引きがはっきりしているほど、
子どもは“世界のルール”を安心して学ぶことができます。
例外の扱いは事前合意
どれだけルールを決めていても、家族で生きていれば、どうしても「例外」が必要な場面は出てきます。
- 旅行の日だけはゲーム時間を長くしてもいいか
- 誕生日の夜は、就寝時間を少し遅らせてもいいか
- 学校の行事で疲れている日は、宿題の量を調整するか
こうしたときに場当たり的に、
「まぁ今日はいいや」
「やっぱりダメ!」
とその場の気分で変えてしまうと、子どもから見ると
「ルールなんて気分次第で変わるもの」
「ゴネれば何とかなるかも」
というメッセージにもなりかねません。
そこでおすすめなのが、
「例外」をつくるときほど、事前に合意しておくことです。
「明日は旅行だから、ゲームはいつもの2倍までOKにしよう。その代わり、あさってからはいつも通りに戻そうね」
「誕生日だから、今日は10時まで起きてていいよ。でも明日からはまた9時に戻そうね」
というように、「今回は特別」「そして明日からは通常ルールに戻る」というセットで話しておきます。
こうすることで、
- ルールが“ゆるむ”のではなく、「柔軟さを含んだ一貫性」になる
- 子どもも、「例外はあるけれど、基本線は変わらない」と理解しやすくなる
というメリットがあります。
大人同士の足並みを揃える
もうひとつ大きなポイントは、家の中の大人同士の足並みです。
たとえば、
お母さんはゲーム30分ルールを守らせようとしている
お父さんは「まぁいいじゃん」と1時間でもOKを出してしまう
というように、メッセージがバラバラだと、子どもは戸惑うだけでなく、
「どっちに合わせればいいのか分からない」
「厳しいほうの親にだけ反発する」
といった形で、余分なストレスや対立を抱えやすくなります。
共感型フィードバックを機能させるには、
- 何をルールとするか
- 例外はどこまで許容するか
- 叱り方・注意の仕方でNGなラインはどこか
などについて、大人同士であらかじめ話し合っておくことが大切です。
意見が違うのは当たり前ですが、
子どもの前で「どっちが正しいか」の争いになってしまうと、
子どもは“安心して学べる土台”を失ってしまいます。
大人同士でまずすり合わせる。
子どもには、できるだけ同じメッセージで伝える。
この2段構えがあると、子どもは
「ルールは少ないけれど、そこだけはブレない家なんだ」
という感覚を持ちやすくなり、その上に共感型フィードバックの効果が積み上がっていきます。

共感って、ただ優しくすることじゃなくて、『ここから先はダメ』って線も一緒なんですね。

そうなんです。ルールが少なくて分かりやすいほど、子どもは“試してみようかな”と思いやすくなります。優しさと境界はセット、というイメージですね。
🍀 まとめ:共感は甘やかしではなく、「一緒に考える力」を育てる
最後に、この記事のポイントを3つの視点からまとめておきます。
共感は甘やかしではない
「共感する」と聞くと、
「全部受け入れること」
「子どもの言い分をそのまま飲み込むこと」
だと思われがちですが、ここで扱ってきた共感は、そうではありません。
まず感情を受け止めて、防衛を下げる。
そのうえで、事実を整理し、ルールや約束に立ち返る。
という、“理解”と“枠組み”をセットにした関わり方です。
共感は、「怒らなくて済む魔法の言葉」ではなく、
叱る場面を「一緒に振り返る時間」に変えていくための土台だと言えます。
行動に結びつく声かけを意識する
叱りが響かない背景には、
- 恐怖や不安で頭がいっぱいになる
- 防衛で言い訳が増える
- 抽象的な言葉で、具体的な行動がイメージできない
といった心理的な理由がありました。
だからこそ、
- 「イヤな気持ちだったよね」と感情を言葉にして
- 「ここまではできてたね。次はどこからやる?」と現状と一歩先を確認し
- 「次は●●と▲▲のどっちでいく?」と選択肢を一緒に決める
といった、“行動レベルに落ちる声かけ”が重要になります。
目的は、「良い子にさせること」ではなく、
自分の感情を扱いながら、どう行動を選ぶかを一緒に練習していくこと。
です。
一貫性が安心をつくる
どれだけ共感的な声かけをしても、
- ルールが多すぎて曖昧
- 例外がその場しのぎ
- 大人同士の方針がバラバラ
という状態だと、子どもの中に「安心して試してみよう」という気持ちは育ちにくくなります。
- ルールは少なくシンプルに
- 例外は事前合意で、「特別」と「普段」の線をハッキリさせる
- 大人同士の足並みを出来る範囲で揃える
こうした一貫性のある枠組みがあるからこそ、
共感型フィードバックによる関わりが、子どもの心にじわじわと根づいていきます。
叱ること自体をゼロにする必要はありません。
ただ、「叱る」をゴールにするのではなく、
叱ることをきっかけに、
「何がうまくいかなかったのか」
「次はどうしてみるか」
を一緒に考えていく。
そんな関わり方に、少しずつシフトしていけると、
親にとっても子どもにとっても、日々のやりとりが少しラクになっていきます。
