自分らしさが分からないときの心理構造|社会人が迷いやすい理由と抜け出す方法

『自分らしさ』って言われても、今の仕事とどうつながるのか、正直あまりイメージできていなくて……。

そのモヤモヤが出てきていること自体が、もうスタートラインなんです。一緒に少しずつ整理して、自分で納得できる“探し方”を作っていきましょう。
仕事ではそれなりに成果を出しているし、周りからの評価も悪くない。「まじめで頼りになる」「安心して任せられる」と言われることもある。それなのに、ふと一人で帰り道を歩いているときに、
「で、本当の“自分らしさ”って何なんだろう?」
と、急に足が止まってしまう――。そんな感覚を覚えたことはありませんか。
日々の仕事の中では、「会社の評価」「上司の期待」「同僚との比較」といった“他人のものさし”に囲まれて過ごす時間がどうしても長くなります。気づけば、「評価される自分」「役に立つ自分」を優先するあまり、自分の本音や、やりたいこと・大事にしたい価値観がだんだん後ろに下がっていってしまうことがあります。
転職サイトを眺めても、自己分析の本を読んでも、「ピンとくる答えが見つからない」「どの選択肢も“しっくり”こない」。そんな状態が続くと、
- このまま今の会社で頑張るべきなのか
- どこかに“本当の自分らしさ”を発揮できる場所があるのか
- そもそも、自分は何を大事にしたい人間なのか
が、ますます分からなくなってしまいます。
今回の記事では、こうした「自分らしさが分からない状態」を、単なる“性格の問題”ではなく、心の構造や環境との関係から整理していきます。
- なぜ“自分らしさ迷子”が起きるのか
- どんなふうに心のレンズがゆがみやすいのか
- 小さな行動実験を通して、自分らしさの手がかりを集める方法
- 集めた手がかりを「言葉」にしていくステップ
を、順番に解説していきます。
「これが100点満点の正解だ」というゴールを決めつけるのではなく、自分らしさを“探し続けられる自分”になることを、この記事のゴールにしていきましょう。
この記事でわかること
- 「自分らしさ迷子」は性格の弱さではなく、他者基準・役割同一化・探索不足の積み重ねで起きやすい構造だと理解できる
- 借り物の「〜すべき」を棚卸しし、身体の快・不快サインや没頭経験から自分のものさしを取り戻す視点を持てる
- 15分×7本のマイクロ挑戦とエネルギー採点を使って、「続けたい/広げたい/捨てたい」を仕分ける具体的なやり方がつかめる
- 「誰に/何を/どう価値提供したいか」や「嬉しさ・怒り・違和感」、他者からの強みフィードバックを手がかりに軸を言語化するコツが分かる
- 診断や無料コーチングに答えを丸投げせず、小さな実験→言語化→再実験の循環で「自分らしさ」を育てていくという長期的な見方を持てる
🍀 “自分らしさ迷子”が起きる背景

まず、なぜ「自分らしさが分からない」という状態になりやすいのか。それは、多くの場合「その人の性格が弱いから」ではなく、環境とのかかわり方の積み重ねで説明できます。ここでは次の3つの流れで見ていきます。
- 他者基準が強くなりすぎる
- 役割と自分を同一視してしまう
- 探索する経験が足りない
他者基準が強くなりすぎる(評価・比較の内面化)
社会人になると、どうしても「他人からどう見られているか」を意識せざるをえません。上司の評価、査定、同僚との比較、取引先からの反応…。こうした外側の基準は、本来であれば「仕事の成果を測るためのもの」です。
ところが、その基準が長く続くと、
- 「良い評価を取れている自分」=OK
- 「評価が低い自分」=ダメ
というように、自分自身の価値そのものを外側の物差しで測るクセがついていきます。心理学では、こうした“他者からの評価や期待を自分の内側に取り込んでしまうこと”を「内面化」と呼びます。
この状態が強くなると、
- 「上司がどう評価するか分からないことには手が出ない」
- 「周りから浮いて見えない選択をしたい」
といった気持ちが強くなり、自分の感覚よりも「他人の目」が常に一歩先に立つようになります。すると、
- 「自分はこれが好きだ」
- 「ここには違和感がある」
といった素朴な好みや感情の声が、だんだん聞こえにくくなるのです。
役割と自分を同一視してしまう(役割同一化)
次に、多くの社会人がハマりやすいのが「役割同一化」です。これは、「会社や家庭で与えられた役割=自分そのもの」だと思い込んでしまう状態です。
例えば、
- 「管理職だから、弱みは見せてはいけない」
- 「総務だから、みんなの雑用も笑顔で引き受けるべき」
- 「家族を養っている以上、文句を言わずに働き続けるのが当然」
といった“役割として期待される振る舞い”が、そのまま自分の人格や価値と結びついてしまうイメージです。
役割をきちんと果たそうとすること自体は、とても大事な姿勢です。ただしそれが行き過ぎると、
「もしこの役割を手放したら、自分には何が残るんだろう」
という怖さが出てきます。その結果、仕事や職場への違和感があっても、
- 「こんなことを考える自分は甘えているのかもしれない」
- 「期待に応えられない自分には価値がないのでは」
と、感じた違和感のほうを切り捨ててしまいやすくなります。
こうして、「役割をこなす自分」ははっきりしているのに、“役割を外したときの素の自分”がよく分からない、という状態が生まれてきます。
探索する経験が足りない(試行の量と幅が足りない)
3つ目は、単純に「試してみた経験の量と幅が足りていない」というポイントです。
発達心理学の研究では、「自分はどう生きたいのか」「どんな価値観を大事にしたいのか」を形作るには、
- いろいろな活動を試してみること(探索)
- その中から「これでいこう」と選び取ってみること(コミットメント)
という両方のプロセスが重要だとされています。
ところが現実には、
- 新卒で入った会社でずっと同じ部署にいる
- 業務外の活動に参加する余裕がない
- 平日は仕事と家の往復だけで一日が終わる
といった状況も少なくありません。このように「探索の機会」自体が少ないと、自分の好みや価値観を言語化しづらいのは、ある意味で自然なことです。
また、探索が不足していると、
「やりたいことが分からないのは、自分に意志がないからだ」
と、つい自己否定の方向に解釈してしまいがちです。しかし実際には、「自分らしさが分からない」という状態は、
- 他者基準が強くなりやすい社会の構造
- 役割に縛られやすい働き方
- 探索のチャンスが限られがちな生活パターン
が重なった、ごく自然な結果として起きている側面も大きいのです。
「診断」や「無料コーチング」に“答え”を丸投げしない
ここで、最近増えている「適職診断」や「無料キャリアコーチング」との付き合い方にも触れておきたいと思います。
こうしたサービス自体が悪いわけではありません。うまく使えば、
- 自分では気づいていなかった強みのヒントをもらえる
- キャリアについて考える“きっかけ”になる
といったメリットもあります。
ただし、「自分らしさ迷子」の状態がつらいときほど、
- 「この診断が、私に向いている仕事をズバッと決めてくれるはず」
- 「プロに相談すれば、どの道に進めばいいか教えてもらえるはず」
と、“正解を外側に求めすぎる”形で依存してしまうリスクがあります。
- 診断テストは、あくまで限られた質問項目から導かれた「傾向」にすぎないこと
- 転職エージェントの無料コーチングは、ビジネスとして「紹介しやすい職種・業界」にどうしても寄りやすいこと
などを考えると、「これが自分のすべてだ」と決めつけてしまうのは危険です。
大事なのは、
- 診断結果やコーチからのコメントを、“ネタ帳のひとつ”として扱うこと
- 「本当にそうだろうか?」「自分の感覚とも合っているか?」と、自分の側からも問い直してみること
です。
この記事で目指したいのは、外側のサービスに「自分らしさの答え」を丸投げすることではなく、自分の内側からもゆっくり確かめていける土台をつくることです。そのために、次の章では「心のレンズを見直す」――つまり、自分を見る“ものさし”や“眼鏡”をどう調整していくか、という話に進んでいきます。

“自分らしさ迷子”って、これまで『自分の甘えかな』って思ってました……。

むしろ、社会の構造や役割の重さがそうさせている面が大きいんです。診断や無料コーチングに丸投げする前に、自分の内側から手がかりを集める土台をつくるほうが、結果的には近道になりますよ。
🍀 心のレンズを見直す

さきほどは、「自分らしさ迷子」が起きる背景を見てきました。ここからは、その状態から一歩抜け出すために、自分を見る“レンズ”を調整する作業に入っていきます。
同じ出来事でも、
- 「これはチャンスだ」と感じる人もいれば
- 「これはリスクだ」と感じる人もいる
その違いは、物事を見る“前提”や“レンズ”が人によって違うからです。
この章では、
- 自分の中にある「〜すべき」前提を見える化する
- 頭ではなく、身体の快・不快サインを手がかりにする
- 「時間を忘れるほど没頭していた活動」を記録していく
という三つのステップで、自分のレンズを少しずつ調整していきます。
「〜すべき」の棚卸しで、隠れている前提を見える化する
まず取り組みたいのは、自分の中にある「〜すべき」「〜でなければならない」といった暗黙のルールを棚卸しすることです。
例えば、こんなフレーズが心の中で回っていないでしょうか。
- 「社会人なんだから、弱音を吐くべきじゃない」
- 「上司から頼まれた仕事は、断るべきではない」
- 「自分より年下には、仕事で負けるべきじゃない」
- 「家族がいる以上、安定した会社を辞めるべきではない」
こうした「〜すべき」は、ほとんどの場合、誰かに明確に教えられたわけではありません。親や先生、元上司、社会の空気などから、少しずつ“借りてきて”、自分の中でルール化してしまったものです。
ワーク:自分の「〜すべき」リストを10個書き出す
ノートかメモアプリを開いて、思いつく限りの「〜すべき/〜してはいけない」を書き出してみます。
- 仕事に関しての「〜すべき」
- お金やキャリアに関しての「〜すべき」
- 人間関係に関しての「〜すべき」
など、ジャンルを分けて書いてみると出てきやすくなります。
書き出したら、一つひとつについて、
- 「これは、誰から受け取った価値観だろう?」
- 「今の自分にとっても、本当に大事にしたいルールだろうか?」
と問い直してみます。
中には、
- 「昔の職場では役に立ったけど、今の環境だと苦しくなるルール」
- 「親世代の前提を、そのまま自分に当てはめていただけのルール」
が、意外と混ざっているかもしれません。
全部をすぐに捨てる必要はありません。ただ、「あ、これは“自分が本当に大事にしたい価値観”というより、“昔の誰かの声”が残っているだけかもしれない」と気づけるだけでも、心のレンズは少しクリアになります。
頭よりも「身体の快・不快サイン」を手がかりにする
次に大事なのが、身体が出している“OK/NGサイン”に気づくことです。
頭で考えると、
- 「この仕事はキャリア的にはプラスのはず」
- 「条件だけ見れば、悪くない転職先のはず」
と“理屈”では◎に見える選択肢でも、いざ想像してみると、
- 胃がキリキリする感じがする
- 肩や首が急に重くなる
- 逆に、自然と呼吸が楽になる
といった、身体の反応がまったく違うことはよくあります。
最近の心理学・神経科学の知見でも、人は理屈だけで意思決定しているわけではなく、
- 「ザワザワする」「スッとする」といった身体感覚
- 「何となく嫌な予感がする/なぜかワクワクする」といった直感的な感覚
も、重要な情報源になっていることが示されています。
ミニ観察:一日の中で3回、「身体の状態メモ」を残す
いきなり“深い内省”をしようとすると疲れてしまうので、まずは軽い観察からでOKです。
- 朝の出社前
- 午後の仕事の切れ目
- 帰宅後や寝る前
など、一日3回くらいを目安に、次の3行だけメモしてみます。
- そのとき何をしていたか(または、何をしようとしていたか)
- 身体の感覚(重さ・軽さ、緊張・ゆるみなど)
- ざっくりしたラベル(「やや快」「どちらでもない」「やや不快」くらいでOK)
ポイントは、細かく分析しようとしないことです。「正確に言語化しなきゃ」と力むと、また頭で考えすぎてしまいます。
何日か続けてみると、
- 「人と1対1で話しているときは比較的ラク」
- 「複数人会議の前後は、決まって肩が硬くなっている」
- 「資料作りに集中しているときは、時間が早く感じる」
といったパターンが、少しずつ見えてきます。
“自分らしさ”を言葉にする前に、自分の身体がどんな場面でしんどくなり、どんな場面で楽になるのかを知ること。これは、とても地味ですが、かなり信頼できるナビゲーションになります。
「時間を忘れるほど没頭していた瞬間」を集める(没頭記録)
三つ目のレンズ調整は、「時間忘却活動」、つまり時間を忘れて没頭していた経験を集めることです。
ここで言う「没頭」とは、
- 特別に楽しいイベントでなくてもいい
- 大きな成果が出た仕事でなくてもいい
けれど、
「あれ、もう1時間も経ってたのか」
「気づいたら休憩を忘れてやっていた」
というような、集中しているうちに時間の感覚が薄くなっていた状態を指します。
振り返りワーク:過去1〜2年の「没頭していた場面」を思い出す
ノートに、過去1〜2年をざっくり振り返りながら、次のような項目を箇条書きしてみます。
- どんな作業・仕事に没頭していたか
- 一人作業だったか/誰かと一緒だったか
- そこに、どんな要素が含まれていたか(考えることが多かった/手を動かしていた/人と対話していた/細かい改善を繰り返していた…など)
ここでも、「立派な実績である必要」は全くありません。
- 先輩の資料フォーマットを自分なりに改良していたとき
- 後輩に業務を教えるマニュアルを作っていたとき
- エクセルの関数を調べながら、業務の集計表を作っていたとき
- 趣味の分野で、ブログやSNSの投稿案を延々と練っていたとき
など、「つい夢中になってしまった瞬間」を、仕事・プライベートを問わず拾っていくのがコツです。
没頭記録から見えてくるもの
「没頭していた瞬間」をいくつか並べてみると、次のようなパターンが見えてくることがあります。
- 人・情報・モノのどれを扱うのが好きか
- ゼロ→イチが好きか、イチ→改善が好きか
- 一人で集中する時間と、誰かと関わる時間のバランス
これらは、いわゆる「自己分析シート」のようなきれいなフレームよりも、その人の“生身の自分らしさ”に直結していることが多い手がかりです。
この大項目2でやっていることは、まとめるとこうです。
- 借り物の「〜すべき」を一度テーブルの上に並べてみる
- 頭の理屈だけでなく、身体の快・不快サインにも耳を傾ける
- 過去の「没頭していた瞬間」を集め、パターンを見る
この三つを通して、「他人のものさし」ではなく「自分の内側の感覚」を少しずつ取り戻していくのが狙いです。
次の章では、ここで見つけた手がかりをもとに、実際に「小さな行動実験」を回していくための具体的なステップ――“らしさ”探索のミニ実験について整理していきます。

正直、これまで身体の感覚とか感情を、ここまでちゃんと見たことはなかったです……。

だからこそ、ここからが伸びしろなんです。『〜すべき』の棚卸しと身体サイン、没頭記録を重ねていくと、頭の条件表とは別の“自分のものさし”が少しずつ浮かび上がってきますよ。
🍀 “らしさ”探索のミニ実験

ここまでで、
- 借り物の「〜すべき」を棚卸しする
- 身体の快・不快サインに気づく
- 「時間を忘れて没頭していた瞬間」を集める
という形で、自分の内側から出てくる手がかりをそろえてきました。
ここから先は、それらを眺めているだけではなく、「小さく試す」「短く試す」を繰り返しながら、“自分らしさの輪郭”を少しずつ描いていくステップです。
いきなり「転職する/しない」「独立する/しない」といった大きな決断に飛びつくのではなく、リスクの小さい“実験”を積み重ねていくイメージで進めていきます。
1週間のマイクロ挑戦(15分×7本)
まずは、「マイクロ挑戦」という単位で、小さな実験を設計していきます。
ここでのルールはシンプルです。
- 1回あたり15分程度でできることに絞る
- 1週間のあいだに、7本ぶん試してみる
- 「ちょっとだけ気になる」「少しワクワクする」ことを優先する
ネタの出し方
大項目2で書き出した、
- 「没頭していた瞬間」
- 「身体がラクだった/逆に重くなっていた場面」
をヒントにしながら、
「前から少し気になっていたけど、面倒で手をつけていないこと」
「今の仕事の中で、もう少し深掘りしてみたい要素」
を3〜5個くらいリストアップします。
例えば:
- 後輩への説明が意外と好き → 「後輩向けの簡単な説明資料を15分だけ作ってみる」
- データをいじるのが嫌いではない → 「業務の数字をざっくり可視化するグラフを作ってみる」
- 人の話を聴くときに集中できる → 「同僚の“最近困ってること”を15分だけ聴く時間をつくる」
- 趣味の文章を書くのが好き → 「自分の価値観についてブログの下書きを15分だけ書いてみる」
など、「これを極めて収入にする」レベルの話ではなく、“ちょっとやってみたい方向”に、15分だけ身体を向けるイメージです。
大事なのは「小ささ」と「安全圏」
ここで注意したいのが、いきなり人生を変えるような挑戦を選ばないことです。
- いきなり高額なスクールに申し込む
- いきなり転職エージェントと何社も面談を組む
- いきなり部署異動や退職を打診する
こうした動きは、状況によっては必要ですが、「自分らしさがまだ輪郭すら見えていない段階」では、リスクに対して情報量が足りなさすぎることが多いです。
最近の「適職診断」や「無料コーチング」も、“小さく試すためのヒント”として使う分にはよくても、それ自体が“決定打”ではない、と考えておくほうが安全です。
まずは、自分の手と頭と身体を15分だけ動かしてみる。このくらいの単位から始めることで、失敗してもダメージが小さく、続けやすくなります。
エネルギー採点(+2〜−2で記録する)
マイクロ挑戦をやってみたら、その都度、「エネルギーの変化」に点数をつけて記録します。
ここで見たいのは、「うまくできたかどうか」ではなく、その活動が、自分のエネルギーをどう動かしたかです。
採点の目安
作業が終わったあと、感覚でいいので次の5段階でつけてみます。
- +2:かなりエネルギーが増えた/気分がスッと軽くなった/まだ続けていたい感じ
- +1:ややエネルギーが増えた/悪くない/ちょっとだけ前向きになった
- 0:どちらとも言えない/特に増えもしないし減りもしない
- −1:やや消耗した/終わってホッとしたが、少しぐったり
- −2:かなり消耗した/もう当分やりたくないレベルで疲れた
メモの例:
- 「後輩の質問に15分だけじっくり付き合った → +1(意外と楽しかった)」
- 「業務マニュアルの文章を整理 → 0(嫌ではないが、特別ワクワクもしない)」
- 「データの細かいチェック作業 → −1(終わったあとの肩こりと頭痛が強い)」
ここでのポイントは、
- 「上手くできたかどうか」と「エネルギーの増減」を分けて考えること
- 「苦手だけど、やってみたら元気になる」というパターンもありえること
です。
例えば、
- 人前で話すのは緊張する(スキルとしてはまだ得意ではない)
- でも、終わったあとに「やってよかった」という実感がある
という場合、「難易度」と「自分らしさ」は必ずしも一致しません。だからこそ、「やりやすさ」ではなく、「終わったあとのエネルギー」に注目して採点してみます。
「続けたい/広げたい/捨てたい」の3分類でふり返る
1週間(15分×7本)のマイクロ挑戦とエネルギー採点がたまってきたら、最後にそれらを3つにざっくり分類してみます。
- 続けたい(もう少し同じ条件で続けてみたい)
- 広げたい(時間や範囲を少しだけ広げてみたい)
- 捨てたい(無理に続ける必要はなさそう)
続けたい:同じ条件で、もう少し回数を重ねる
エネルギーが「+1〜+2」のものは、“自分らしさ候補”として有望です。いきなり大きく広げなくてもいいので、
- 来週も同じように15分だけやってみる
- 社内で似たような機会をもう一回だけ作ってみる
といった形で、「同じ条件で回数を増やす」ことを意識します。
ここで大事なのは、「飽きるまでやる」というより、
「3〜5回くらい、同じ方向に身体を向けてみる」
くらいの軽さで続けてみることです。
広げたい:時間・難易度・関わる人を少し増やしてみる
「+2が続いている」「やっていると時間を忘れる」そんな活動が出てきたら、今度は少しだけ“広げる”実験をしてみます。
- 一人で作っていた資料を、同僚や後輩向けの勉強会にしてみる
- 15分だけだったブログの下書きを、30分フルでやってみる
- 部署内だけだった取り組みを、他部署との共同プロジェクト案として提案してみる
など、「今より半歩だけ負荷を上げる」イメージです。
ここでも、いきなり大きな転職・独立につなげる必要はありません。今いる場所の中で、“広げる練習”をしてみること自体が、後々のキャリアの選択肢を増やしてくれます。
捨てたい:無理に続けず、「データがひとつ増えた」と考える
エネルギーが「−1〜−2」に偏っている活動は、「自分には合わない可能性が高い方向性」として扱います。
ここで「せっかくやったのに、向いてなかったのか……」と自己否定に入る必要はありません。むしろ、
「この方向は、自分のエネルギーが減りやすい、というデータがひとつ増えた」
と評価してしまっていいのです。
キャリアの世界では、「やりたいことを見つける」のと同じくらい、「やらない選択肢をハッキリさせること」も重要だと言われます。
- 無理に頑張ると消耗する方向
- 本を読んだり周りが勧めていても、自分にはピンとこない方向
を早めに“候補から外していく”ことで、残ったエネルギーを「続けたい/広げたい」に振り向けられるようになります。
この「マイクロ挑戦 → エネルギー採点 → 3分類」は、1回やって終わりではなく、何度でも回していい循環です。
- 月に1回、「マイクロ挑戦週間」をつくる
- 四半期ごとに、「続けたい/広げたい/捨てたい」を棚卸しする
といった形で、小さな実験を積み重ねていくと、“自分らしさの輪郭”がだんだん太くなっていきます。
次の章では、こうして集めた手がかりをもとに、「言葉」のレベルで自分の軸を整理していくステップ――“自分らしさ”の言語化テンプレについて扱っていきます。

正直、小さな実験ばかりだと『結局なにも進んでいないんじゃ…』って不安になりそうです。

でも、いきなり大きく動くほうがリスクも後悔も大きいんです。15分のマイクロ挑戦を重ねて『続けたい/広げたい/捨てたい』が見えてくると、大きな決断をするときにもブレない“下地”ができますよ。
🍀 “自分らしさ”を言葉にしてみる:言語化テンプレ

ここまでで、
- 「〜すべき」の棚卸し
- 身体の快・不快サイン
- 時間を忘れて没頭していた瞬間
- マイクロ挑戦とエネルギー採点
といった形で、かなり多くの“素材”が集まってきました。
ただ、人は「なんとなくの感覚」だけだと不安になりやすく、逆に「言葉のラベル」がついてくると、意思決定や対話がしやすくなります。
この章では、完璧な自己PR文を作るのではなく、
「今の自分なりの仮の答え」を、いつでも書き換え可能なメモとして言語化する
ことをゴールにします。ここでも、正解探しではなく、“仮説づくり”として構えるのがポイントです。
「誰に/何を/どう価値提供したいか」を一文にしてみる
まず試してほしいのが、
「私は、誰に/何を/どう価値提供したいか」
を、一文の型にしてみることです。いわゆる「バリュープロポジション(価値提供の軸)」を、自分の言葉でざっくり書いてみるイメージです。
テンプレートはこんな感じです。
「私は、(誰に)/(何を)/(どんな関わり方・方法で)提供したい」
例をいくつか挙げると…
- 例1:「私は、仕事で行き詰まりやすい同僚に、状況整理と選択肢の提案を、落ち着いた対話と資料づくりで提供したい。」
- 例2:「私は、現場のオペレーターやスタッフに、日々の小さなムダや危険の気づきを、わかりやすい図解と仕組みづくりを通して提供したい。」
- 例3:「私は、新しい環境に不安を感じている人たちに、『大丈夫、やっていけそうだ』と思える安心感を、自分の失敗談や丁寧なサポートで提供したい。」
ここで大事なのは、
- いきなり「社会全体」「世界中の人」など大きくしすぎないこと
- 「すごいこと」を書こうとしなくていいこと
- 実際に自分がマイクロ挑戦でやってみたこと・没頭できたこととつながりのある内容にすること
です。
最初は、
「私は、身近な人に/仕事のやり方の工夫を/資料や説明を通して提供したい。」
くらいのざっくり感でもOKです。
この一文は“仮”でいいので、ノートの1ページ目やスマホのメモの一番上など、「いつでも書き換えられる場所」に置いておくと、後から修正しやすくなります。
「嬉しさ・怒り・違和感」日記で輪郭を出す
次に、“自分らしさの輪郭”をより立体的にしていくために、感情を使った日記を活用します。
ポイントになるのは、
- 嬉しさ
- 怒り
- 違和感
という三つの感情です。
心理学的には、これらの感情はすべて、「自分が何を大事にしているか」を教えてくれるサインと捉えることができます。
感情日記のフォーマット
1日の終わりや、気になる出来事があったタイミングで、次の3ステップでメモしてみます。
- 【事実】何が起きたか(できるだけ客観的に)
- 【感情】そのとき、どんな気持ちになったか(嬉しい・ホッとした・モヤモヤ・イラッとした など)
- 【価値観のヒント】なぜそう感じたのか、自分なりの理由を一言で書いてみる
例:
- 嬉しさのケース
【事実】後輩が、「この前教えてくれたやり方で、ミスが減りました」と報告してくれた
【感情】嬉しい・誇らしい・ちょっと照れくさい
【価値観のヒント】「自分の工夫が、誰かの役に立つこと」を大事にしているのかもしれない - 怒りのケース
【事実】会議で一人の意見だけがずっと無視されていた
【感情】イラッとした・モヤモヤした
【価値観のヒント】「立場に関係なく、話をちゃんと聴くこと」を大事にしているのかもしれない - 違和感のケース
【事実】転職サイトで「年収アップのために、とにかく今より条件の良い会社へ」と強調する文章を読んだ
【感情】なんとなく引っかかる・ノれない感じ
【価値観のヒント】「お金だけでなく、仕事の意味や貢献実感も重視したい」のかもしれない
この「嬉しさ・怒り・違和感」を集めていくと、
- どんな場面で「嬉しい」が出やすいのか
- どんな扱われ方をすると「怒り」や「モヤモヤ」が出るのか
- どんな価値観に対して「うーん」とブレーキがかかるのか
が少しずつ見えてきます。
これらはすべて、さきほどの「私は、誰に/何を/どう価値提供したいか」を肉付けする材料になります。
第三者に“強み仮説”を問い返す
最後に、「他者から見た自分」というレンズも、“仮説のひとつ”として取り入れてみます。
注意したいのは、
- 「他人が言うことが正解だから、それに従う」という姿勢ではなく
- 「こう見えているのかもしれない」という鏡のひとつとして扱うこと
です。
質問の仕方を工夫する
同僚・元同僚・友人など、信頼できる相手に対して、ストレートに「私の強みって何だと思う?」と聞くのは、相手にとっても少し難易度が高い質問です。
代わりに、こんな聞き方をしてみると答えやすくなります。
- 「一緒に仕事していて、『ここは助かる』と思うポイントってある?」
- 「もし私に仕事を頼むとしたら、どういう場面のとき?」
- 「私が一番“生き生きして見えた”のって、どんなときだった?」
こうした質問の答えをメモしておき、あとから自分の感覚と照らし合わせてみます。
出てきたフィードバックを「仮説」としてメモする
例えば、周りからこんなフィードバックが返ってくるかもしれません。
- 「混乱している状況を整理するのがうまい」
- 「人の話を遮らずに最後まで聴けるのがありがたい」
- 「感情的にならずに、淡々と進行してくれるところが助かる」
ここで大事なのは、
- 「そんなことないです」と否定して終わりにしないこと
- かといって、「そうか、自分の強みはこれなんだ」と即決しないこと
です。
ノートには、
「周りから見た“強み候補”」
として、
- 混乱した状況の整理
- 最後まで話を聴くこと
- 感情に巻き込まれにくい進行
など、箇条書きで“候補のリスト”として残しておくイメージです。
そして、
- マイクロ挑戦でのエネルギー採点
- 「嬉しさ・怒り・違和感」日記
- 自分なりの価値提供の一文
と照らし合わせてみて、
- 「これは自分の実感とも重なる」
- 「これはあまりピンとこない」
と、自分の側からも選び直していくことが重要です。
この大項目4でやっていることは、まとめると、
- 「私は、誰に/何を/どう価値提供したいか」を一文の“仮説”として持つこと
- 「嬉しさ・怒り・違和感」の感情日記から、自分の価値観の輪郭を浮かび上がらせること
- 他者からのフィードバックを“強み仮説”として受け取り、自分の感覚とすり合わせること
です。
完璧な自己紹介文やキャッチコピーを作る必要はありません。むしろ、
「今の自分なりの“仮のプロフィール”を、少しずつ書き換えながら更新していく」
というスタンスのほうが、変化の大きい時代にはフィットします。

こうやって言葉にしてみると、なんだか浅く感じて『こんなもんでいいのかな…』って不安になります。

今は“仮のプロフィール”で十分ですよ。感情日記や周りからのフィードバックを足しながら、半年ごとに書き換えていくくらいのラフさで更新していく。それくらいの柔らかさが、むしろ本当の“自分らしさ”にはちょうどいいんです。
🍀 自分らしさは「見つける」より、「育てていく」もの
ここまで、「自分らしさ迷子」の背景から、心のレンズの見直し方、小さな実験、言語化のステップまで見てきました。
最後に、この記事のポイントを「これだけ持ち帰ってもらえればOK」という形で整理しておきます。
「正解探し」よりも、「探索量」を増やす
まず押さえておきたいのは、
「自分らしさ」は、どこかに完成品が置いてあって、それを“当てに行く”パズルではない
ということです。
一発で当たる適職診断、「あなたは○○タイプです」と断言してくれる無料コーチング、SNSにあふれる「これが天職の見つけ方」という情報――こうしたものは「ヒント」にはなっても、自分の代わりに“人生の答え”を決めてくれる存在ではありません。
むしろ、
- 15分のマイクロ挑戦を何本も試してみる
- エネルギー採点を重ねて「続けたい/広げたい/捨てたい」を整理する
- 月に一度、自分の感情日記や没頭記録をふり返る
といった、地味だけれど再現性の高い探索をどれだけ重ねられるかの方が、長期的には効いてきます。
「一発逆転の答え」ではなく、
「自分なりに、試行錯誤の“回数”と“幅”を増やしていく」
ことが、結果的に「自分らしさ」を育てる一番の近道になります。
頭の条件表ではなく、「身体サイン」と「感情」をナビにする
キャリアや働き方を考えるとき、つい私たちは、
- 年収
- 会社の知名度
- 職種の将来性
- 世の中的な「正しさ」
といった“条件表”だけで比較したくなります。
もちろん、生活や家族のことを考えれば、条件を無視することはできません。ただし、「条件だけで決めた選択」が、後から大きな違和感や消耗につながるケースも少なくありません。
この記事で扱ってきたように、
- ある選択肢を思い浮かべたとき、身体は軽くなるのか、重くなるのか
- その仕事や環境をイメージしたとき、「嬉しさ」「怒り」「違和感」のどれが強く出るのか
といった身体サインや感情は、頭の条件表とは別の“ナビ”として働いてくれます。
- 「理屈では◯だけど、身体がずっと−1を出している方向」
- 「条件的には少しハードだけれど、やるといつも+1〜+2になる活動」
このズレに気づけるようになると、「やめるべきもの」と「育てるべきもの」の見分け方が少しずつ変わってきます。
小さな実験 → 言語化 → 再実験の“循環”を回す
最後に、「自分らしさ」を形にしていくうえで大事なのは、一回で決めないことです。
- 小さな実験をする(15分のマイクロ挑戦を試す)
- エネルギー採点や感情日記で、「どんなときにどう感じたか」を記録する
- 「誰に/何を/どう価値提供したいか」の一文や、“強み仮説”として言葉にしてみる
- その言葉を持ちながら、また別の小さな実験をしてみる
この「小さな実験 → 言語化 → 再実験」のサイクルを回していくことで、
- 「今の自分にフィットしている仮説」
- 「もう役目を終えた価値観やルール」
がだんだん見分けやすくなっていきます。
ここで重要なのは、
「言語化したものを、絶対的な正解だと思い込まないこと」
です。
- 半年後の自分から見たら、今の一文は少し古びて見えるかもしれない
- 新しい経験を積めば、「誰に」「何を」「どう」の部分は当然アップデートされる
その変化こそが、“自分らしさが成長しているサイン”と捉えていいと思います。
揺れながら進んでいる自分を、少しだけ信頼してみる
「自分らしさが分からない」という感覚は、裏を返せば、
- 「周りの期待だけで生きるのは違うのではないか」
- 「自分の内側の声もちゃんと聴いてみたい」
という、健全な問いかけが始まっているサインでもあります。
その問いが見えてしまったからこそ、
- 今の仕事を続けるにしても
- どこかで環境を変えるにしても
「自分の納得感」を置き去りにしづらくなる。だからこそ苦しいし、だからこそ大事なタイミングでもあります。
もし今、
「何も見えていないようで不安だ」
と感じているとしても、
- 「分からないなりに、こんなことを試してみた」
- 「これは合わなかったという“データ”がひとつ増えた」
- 「ここには嬉しさ/ここには違和感があると気づけた」
という一つひとつは、すべて“自分らしさの地図”の線を引いている作業です。
今日この瞬間に、人生の大きな決断をする必要はありません。ただ、
「小さな実験を続けながら、自分らしさを“育てていく”側に立つ」
と決めることは、今このタイミングでもできます。
その選択をした読者の方が、これから先のキャリアや人生を、自分なりのペースで更新していけることを願っています。
