子どもの願いも親の願いも大切にする「小さな相談」の始め方
この記事は前回の記事の続きになります。
まだ、お読みでない場合は下記リンクよりお読みになることをお勧めします。
前の記事:子どもが何回言っても聞かない…つい怒鳴ってしまう親子の流れを整理する
この記事では、怒鳴る前に試せる関わり方を考えていきます。
中心になるのは、子どもの願いを聞きながら、親の願いも消さない「小さな相談」という考え方です。
子どもの願いを聞くことは、親が負けることではありません。
そして、親の願いを伝えることも、子どもを押さえつけることとは限りません。
大切なのは、子どもの願いも、親の願いも、同じ場に出してみることです。
この記事でわかること
- 子どもの願いを聞くことと、言いなりになることの違い
- 親の願いを消さずに伝える考え方
- 未就学児にも伝わりやすい「小さな相談」の作り方
- 交換条件と脅しを分けるための見方
- 安全確保や相談先につながることが必要な場面


🍀 子どもの願いを聞くことは、親が負けることではない
子どもが言うことを聞かないとき、親はつい「どうやって動かすか」を考えます。
もちろん、現実には動いてもらわないと困る場面があります。
朝は出発しなければいけません。
夜は寝る準備をしなければいけません。
危ないことは止めなければいけません。
ただ、その前に一度だけ、子どもの願いを言葉にしてみると、流れが変わることがあります。
子どもの願いを言葉にしてみる
たとえば、子どもが遊びをやめたがらないとき、親の目には「言うことを聞かない」と見えます。
でも、子どもの側には、子どもなりの願いがあることがあります。
- 「まだ遊びたい」
- 「これを最後までやりたい」
- 「自分で決めたかった」
- 「急にやめるのが嫌だった」
そこで、まずは子どもの願いを短く言葉にしてみます。
- 「まだ遊びたいんだね」
- 「これを最後までやりたいんだね」
- 「自分で決めたかったんだね」
- 「今はお風呂より、この遊びを続けたいんだね」
こう言うと、親が子どもに負けたように感じる人もいるかもしれません。
でも、子どもの願いを言葉にすることは、子どもの要求をすべて通すことではありません。
「あなたはそう思っているんだね」と確認することです。
気持ちを確認することは、相談の入口になる
子どもは、自分の気持ちをうまく説明できないことがあります。
そのとき、大人が言葉にしてくれると、自分の気持ちが少し見えやすくなります。
「そう、まだ遊びたかった」
「そう、自分でやりたかった」
「そう、急にやめるのが嫌だった」
このように、子どもの中で気持ちが整理されることがあります。
子どもの願いを聞くことは、親が折れることではありません。
親子の相談を始めるための入口です。
ただし、子どもの願いを聞いたからといって、親の願いを消す必要はありません。


🍀 親の願いも、消さなくていい
子どもの気持ちを尊重しようとすると、親は自分の願いを引っ込めてしまうことがあります。
「子どもの気持ちを大事にしなきゃ」
「怒らないようにしなきゃ」
「無理にさせるのはよくないのかな」
そう考えるほど、親の中にある「本当はこうしてほしい」が言いにくくなることがあります。
でも、親の願いも大切です。
親の願いも生活を守るために必要なことがある
親の願いは、単なるわがままとは限りません。
- お風呂に入ってほしい
- そろそろ寝てほしい
- 時間までに家を出たい
- 危ないことはやめてほしい
- 食事の時間は座っていてほしい
こうした願いは、生活を回すため、安全を守るため、子どもの健康を考えるために必要なこともあります。
子どもの気持ちを大切にすることは、親の願いを全部飲み込むことではありません。
親の願いも、言葉にして出していいのです。
子どもの願いと親の願いを並べてみる
大切なのは、親の願いを「命令」としてぶつけるのではなく、子どもの願いと並べてみることです。
たとえば、
- 「まだ遊びたいんだね。でも、お母さんはお風呂に入ってほしい」
- 「もっとここにいたいんだね。でも、お父さんはそろそろ帰りたい」
- 「自分でやりたいんだね。でも、時間がないから少し手伝いたい」
このように、子どもの願いと親の願いを同じ場に出します。
ここで大切なのは、どちらかをすぐに消さないことです。
子どもの願いだけを優先すると、親が苦しくなります。
親の願いだけを押し通すと、子どもは自分の気持ちを無視されたように感じることがあります。
だからこそ、
- あなたの願いもある
- 親の願いもある
- では、どうしようか
という形にするのです。


🍀 「小さな相談」にすると、子どもは考える側に回りやすい
未就学児との相談は、大人同士の話し合いとは違います。
長い説明をしても、子どもには伝わりにくいことがあります。
正論を並べても、すぐに理解して動けるとは限りません。
だから、相談は小さくていいのです。
長く説明するより、短く、選びやすく、次の行動が見える形にします。
短く、選びやすい形にする
たとえば、お風呂に入りたがらない場面なら、こう言えます。
「まだ遊びたいんだね。あと1回遊んだら、お風呂に行こう」
寝る前に遊び続けるなら、
「絵本を1冊読んだら、電気を消そう」
靴を履かないなら、
「自分で履く?それとも手伝ってほしい?」
片づけをしないなら、
「ブロックは青い箱に入れる?赤い箱に入れる?」
このように、子どもが受け取りやすい形にします。
ここでの目的は、子どもを言い負かすことではありません。
子どもが次の行動を少し考えやすくすることです。
親が決める枠と、子どもが選べる部分を分ける
ポイントは、選択肢を広げすぎないことです。
「どうしたい?」と聞くだけでは、子どもが迷うことがあります。
「お風呂に入る?入らない?」と聞くと、「入らない」と言われて困ることもあります。
親が譲れないことがあるなら、そこは枠として残します。
- 「お風呂に入る」は決定。そのうえで、「歩いて行くか、抱っこで行くか」を選ぶ。
- 「寝る準備をする」は決定。そのうえで、「歯みがきが先か、パジャマが先か」を選ぶ。
- 「帰る」は決定。そのうえで、「最後にすべり台を1回するか、手をつないで帰るか」を選ぶ。
これは、子どもをだますことではありません。
親が必要な枠を持ちながら、子どもが選べる余地を残す関わり方です。
ただし、この声かけで必ず子どもが動く、という意味ではありません。
眠い、疲れている、空腹、不安があるなど、その日の状態によって伝わり方は変わります。
うまくいかない日があっても、親の失敗と決めつける必要はありません。
「怒鳴る前に試せる入口を一つ増やす」くらいに考えると、使いやすくなります。


🍀 交換条件と、脅しは違う
「あなたの願いも聞く。だから、こちらの願いも聞いてほしい」
この考え方は、親子の相互性を育てるうえで大切です。
ただし、言い方によっては、脅しや報酬操作のように伝わることもあります。
怖がらせて動かす言い方とは分ける
たとえば、次のような言い方です。
- 「言うことを聞かないなら、もう遊んであげない」
- 「片づけないなら、全部捨てるよ」
- 「ちゃんとできたら、お菓子をあげる」
こうした言い方は、一時的には子どもを動かすように見えるかもしれません。
しかし、子どもには「怖いから動く」「もらえるから動く」という形で伝わりやすくなります。
また、強い言葉や脅しに近い表現が続くと、親も子どもも苦しくなります。
この記事で扱う「小さな相談」は、怖がらせて従わせる方法ではありません。
お願いを並べて、次の行動につなげる
小さな相談として伝えるなら、少し形が変わります。
- 「まだ遊びたいんだね。じゃあ、あと1回遊んだら片づけよう」
- 「あなたの“これをやりたい”は聞いたよ。次は、お母さんの“お風呂に入ってほしい”も聞いてほしい」
- 「今は帰る時間だよ。最後に1つだけ選ぼう。すべり台にする?ブランコにする?」
ここでは、子どもの願いを無視していません。
同時に、親の願いも消していません。
交換条件というより、親子のお願いを並べて、次の行動につなげている形です。
もちろん、毎回うまくいくわけではありません。
子どもの機嫌や疲れ、眠さによって、まったく聞けない日もあります。
それでも、「怒鳴るしかない流れ」に入る前に、小さな相談を挟むことはできます。


🍀 危ない場面では、相談より安全確保が先
すべての場面で、相談すればよいわけではありません。
道路に飛び出しそうなとき。
高いところから落ちそうなとき。
人を叩こうとしているとき。
危険なものを触ろうとしているとき。
こうした場面では、まず止めることが優先です。
- 「危ないから、これは止めるね」
- 「道路では手をつなぐよ」
- 「叩くのは止めるよ」
このように、短くはっきり伝えます。
子どもの気持ちを聞くのは、そのあとでもかまいません。
- 「走りたかったんだね」
- 「触ってみたかったんだね」
- 「嫌だったんだね」
気持ちは受け止める。
でも、安全の線は譲らない。
これも、親の願いを消さない関わり方です。
子どもを尊重することは、危険な行動まで許すことではありません。
親自身が限界に近いときも、安全を優先する
また、親自身が「このままだと手が出そうで怖い」「強い言葉が止まらない」と感じる場面も、安全に関わる大切なサインです。
その場合は、親だけで何とかしようとしなくて大丈夫です。
その場を少し離れる、別の大人に代わってもらう、園や家族に話す、自治体の子育て相談につながるなど、親子を守るための選択肢を増やしていきましょう。


🍀 うまくいかない日があっても、一人で抱え込まなくていい
ここまで読むと、
「そうできたらいいけど、毎回は無理」
と思う人もいるかもしれません。
その感覚は、とても現実的です。
親も人間です。
疲れている日もあります。
時間がない日もあります。
何度言っても動いてくれず、気持ちが限界に近づく日もあります。
だから、この記事で伝えたいのは、「絶対に怒鳴らない親になりましょう」ということではありません。
大切なのは、怒鳴ってしまったあとに、自分を責め続けることだけで終わらせないことです。
ただし、怒鳴ることや強い言葉を繰り返してよい、という意味ではありません。
親も子どもも苦しくなる流れが続いているなら、その流れを家庭の中だけで抱え込まないことが大切です。
言いすぎたあとに戻ることもできる
もし言いすぎたと思ったら、あとから戻ることはできます。
- 「さっきは大きな声で言いすぎたね」
- 「びっくりしたよね」
- 「でも、お風呂に入ってほしかったのは本当なんだ」
- 「もう一回、どうしたらよかったか考えよう」
このように、あとから修復することもできます。
ただ、修復できることと、強い言葉を続けてよいことは別です。
「手が出そうで怖い」「強い言葉が止まらない」「子どもと二人でいるのがつらい」と感じる日があるなら、それは親失格という意味ではありません。
苦しいときは、外の助けにつながっていい
一人で耐え続けるより、家族、園、自治体の子育て相談、親子のための相談LINEなど、外の助けにつながることも大切です。
子育ては、親だけで抱え込むものではありません。
助けを求めることは、親子を守るための選択肢の一つです。
親子関係は、一回の声かけだけで決まるものではありません。
うまくいかなかったあとに戻ることも、関係を作る大切な時間です。
親が完璧である必要はありません。
ただ、怒鳴るしかない流れに気づいたとき、次は少し違う入り口を試してみる。
そして、苦しさが続くときは、一人で抱え込まず、話せる相手や相談先につながる。
まずはそこからで大丈夫です。
🍀 子どもの願いも、親の願いも大切にする
子どもの願いを聞く。
親の願いも伝える。
そのうえで、未就学児にも分かる小さな相談にする。
これは、親が一方的に我慢することではありません。
子どもを言い負かすことでもありません。
子どもの願いも、親の願いも、同じ場に出してみる。
そこから、親子の小さな相談は始まります。
たとえば、次のような言葉があります。
- 「あと1回遊んだら、お風呂に行こう」
- 「自分で履く?手伝ってほしい?」
- 「あなたの気持ちは聞いたよ。次は、お母さんのお願いも聞いてほしい」
こうした小さな言葉が、怒鳴る前の分岐点になることがあります。
もちろん、いつも思い通りにいくわけではありません。
子どもの状態、親の疲れ、時間のなさによって、うまくいかない日はあります。
それでも、子どもの気持ちを尊重することは、親が何も言わないことではありません。
親の願いを伝えることも、子どもを支配することとは限りません。
もし今、子育てがつらくて一人では抱えきれないと感じているなら、この記事の方法だけで何とかしようとしなくて大丈夫です。
家族、園、自治体の子育て相談、親子のための相談LINEなど、外の助けを借りながら、親子にとって安全な形を探していきましょう。
子どもの願いも、親の願いも、どちらも大切にする。
そのために、親だけが我慢するのではなく、親子を支える人や場所も一緒に増やしていく。
その視点も、子育ての中では大切です。
この記事では、子どもの願いを聞きながら、親の願いも消さない「小さな相談」の作り方を整理しました。
一つ前の記事では、子どもが何回言っても聞かないように見える背景と、親子のあいだで「怒鳴るしかない流れ」が作られやすいことを整理しています。
あわせて読むことで、「なぜ怒鳴ってしまうのか」と「怒鳴る前にどう関わるか」を、ひとつながりで考えやすくなります。
前の記事:子どもが何回言っても聞かない…つい怒鳴ってしまう親子の流れを整理する
参照元・参考資料
この記事では、子育て中の親が一人で抱え込まないこと、体罰や強い言葉に頼らない関わり方、安全に関わる場面での相談先について、以下の資料を参考にしています。
- こども家庭庁「児童虐待防止対策」
- こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」
- こども家庭庁「親子のための相談LINE」について
- こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」
- WordPress.org Documentation「Details block」
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