傾聴

相手の感情を決めつけない聴き方|気持ちを確かめる傾聴の練習

困った様子で話す男性と、気持ちを決めつけず静かに聴く女性
kokomaru

傾聴の基礎 第5回

相手の気持ちを受け止めたくて、「悲しかったんだね」と返したら、「そうじゃない」と言われた。

共感しようとしたのに外してしまうと、次に何と言えばよいか迷いますよね。

相手の感情は、こちらから直接見えるものではありません。大切なのは一度で言い当てることより、こちらの理解が違っていたときに確かめ直せることです。

今回の目標は、推測した気持ちを決めつけずに返し、違うと言われたら、その推測を手放せることです。 会話例はすべて練習用の架空例です。

🍀 前回の振り返り:言い換えで足していない?

「確認の返事が来なくて、作業が止まっている」という話に、「相手に無視されて、腹が立つんだね」と返しました。何が付け加わっているでしょうか。

「無視されている」という理由と、「腹が立つ」という気持ちが加わっています。 どちらも本人はまだ話していません。

前回は、話された内容の範囲で言い換えました。今回は、気持ちを推測する場合に、どう扱えばよいかを練習します。

🍀 本人が話した気持ちと、こちらの推測を分ける

はっきり言葉にしているとき

同僚が「説明がないまま担当を変えられて、腹が立った」と話したら、「説明がないまま担当が変わって、腹が立ったんだね」と返せます。

これは、本人が述べた気持ちを聴き取った応答です。

一方、「担当が変わった」とだけ話した場合、怒っているのか、ほっとしているのか、別の気持ちなのかは分かりません。表情や声の調子が気になっても、それだけで断定しないようにします。

推測するときは、訂正できる余地を残す

「担当が変わって、戸惑っているのかな」

このように、こちらの受け取り方を仮に言葉にする方法があります。ただし、「かな」「かもしれない」を付ければ十分というわけではありません。

相手が「違う」と言ったときに、本当にその答えを受け止められることが大切です。「でも、本当はそうでしょう」と続けるなら、訂正する余地がなくなってしまいます。

🍀 気持ちを当て続ける会話と、確かめる会話

同僚が、準備していた発表の担当から外れたと話しました。

別の感情を次々に当てた場合

自分:「悲しかったんだね」
同僚:「悲しいというか……」
自分:「じゃあ、悔しい? それとも怒っている?」
同僚:「うまく言えないんだけど」

この場面では答えを急がせています。本人の経験より、こちらが出した感情の名前を選ぶことに話が向かっています。

推測をいったん手放した場合

自分:「悲しかったのかな」
同僚:「悲しいというか……」
自分:「その言い方だと少し違うんだね。急いで言葉にしなくても大丈夫」
同僚:「説明がないまま決まったことが、引っかかっているんだ」

この例では、感情の名前を当て直すのをやめています。言葉が出なければ、待つことも、いったん区切ることもできます。

🍀 練習:分かっていない気持ちを、どう返す?

同僚が言いました。

「ずっと準備していた仕事が、急に中止になったんだ」

あなたは、がっかりしているのかもしれないと思いました。本人はまだ気持ちを話していません。決めつけない返答を一つ作ってください。

返答例と、その理由

例1:「準備してきた仕事が中止になって、がっかりしたところもあるのかな」

こちらの推測として伝えています。違うと言われたら、がっかりしたはずだと押し通さないことが前提です。

例2:「急に中止と聞いて、どう受け止めた?」

感情の名前をこちらから置かずに尋ねています。「助かった」「まだ実感がない」などの答えも受け止めます。

例3:「ずっと準備してきた仕事だったんだね」

気持ちを推測せず、話された内容へ返す方法です。感情の言葉が浮かばないときは、この形でも構いません。

相手が話したくなさそうなら、「今は、この話はやめておこうか」と確かめることもできます。気持ちを言葉にしてもらうことを、会話の必須のゴールにしないようにしましょう。

🍀 家族の「別に」にも、答えを求めすぎない

家族に「寂しかった?」と尋ね、「別に」と返ってきたとします。

本当は寂しいに違いないと思っても、「強がらなくていいよ」と決めつけるのは避けます。

「そっか。話したいことがあれば聞くよ」

こう返して区切ることもできます。「別に」の意味を分析するより、本人の言葉と話す意思を尊重します。

子どもへの具体的な声かけを考えたい方は、人と比べて苦しむ子どもに、親は何と言えばいい?声かけ例と言い換え方もご覧ください。

また、強い口調で責められているなど、自分が安心して話せない場面では、気持ちの確認より会話を中断することを優先して構いません。

🍀 まとめ:気持ちの正解を当てるより、確かめ直せること

次の会話で気持ちを返したくなったら、一度だけ「本人が話したことか、自分の推測か」を分けてみてください。感情の言葉は無理に使わなくて構いません。

振り返りは、次の三つです。

  • 推測を、本人の気持ちだと断定しなかったか
  • 違うと言われたとき、別の感情を次々に当てなかったか
  • 言葉にできない・今は話さないという選択を残せたか

練習する機会がなければ、この記事の例に「違うよ」と返された場合の一言を書いてみましょう。「そっか、少し違ったんだね」と受け止めて待つことも、一つの答えです。

次の段階では、ここまでの聴き方を使い、話の要点を短くまとめる練習へ進みます。


参考資料:相手の視点を理解しようとする姿勢と本人の選択の尊重は、MINT:Understanding Motivational Interviewingを参考にしています。本記事の会話例と練習課題は学習用の提案であり、感情の診断や専門技能の評価を行うものではありません。

傾聴の基礎:続けて練習する

前の回:第4回|相手の言葉を言い換えるには?意味を足さずに聴く傾聴の練習

次の回:第6回(準備中)

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雑食系学習者
専門にとらわれず、興味のタネを見つけては掘り下げる「雑食系学習者」。 文系・理系の垣根を越え、心理学・哲学・教育・社会理論などをつまみ食いしながら、「人間を理解すること」をテーマに独自の視点で探究を続けています。

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