傾聴

話を奪わずに聴くには?助言・自分の話を急がない傾聴の練習

カフェで話す男性と、言葉を挟まず落ち着いて聴く女性
kokomaru

傾聴の基礎 第2回

同僚の話を聴いていて、「それなら、こうすればいいのに」と解決策が浮かぶ。家族が困っていると、「自分にも同じことがあった」と伝えたくなる。

どちらも、相手の役に立ちたい気持ちから出ることがあります。けれど、話し終わった相手から「そういうことじゃなくて」と言われると、少し戸惑いますよね。

今回は、助言や自分の経験を話す前に、相手の話をもう少し聴く練習です。

目標は、自分の話に切り替えたくなったとき、いったん相手の話に戻す返答を作れること。 助言や体験談を禁止するのではなく、出す前に一呼吸置いてみます。会話例はすべて練習用の架空例です。

🍀 前回の振り返り:理解と同意は同じ?

まず、次の問いを考えてみてください。

同僚の「提案が通らなくて悔しい」という話に、「悔しかったんだね」と返すと、上司の判断が間違っていたと認めたことになるでしょうか。

答えは、「それだけでは、認めたことにならない」です。

本人が話した気持ちを受け止めることと、上司の判断に賛成・反対することは別でした。

今回は、その理解を急いで終わらせず、相手が話したいことを聴き続ける方法を練習します。

🍀 良かれと思った一言で、話の中心が変わることがある

助言を先に出した会話

同僚:「引き継ぎを何度も説明しているんだけど……」
自分:「手順書を作ればいいよ。私も前に困って、全部まとめたんだ」
同僚:「手順書は、もうあるんだよね」

この返答では、同僚が何に困っているかを聴く前に、解決策と自分の経験へ話が移っています。

手順書が必要なのか、説明する時間が足りないのか、別のことに困っているのか。まだ分かりません。

相手の話を先に聴いた会話

同僚:「引き継ぎを何度も説明しているんだけど……」
自分:「うん、それで?」
同僚:「どこまで伝わったか分からなくて、毎回最初から説明してしまう」
自分:「伝わっているところが分からないんだね」

こちらは、すぐ解決しようとせず、困り事の続きを聴いています。相手の話が具体的になってからなら、一緒に方法を考えることもできます。

いつも長く聴く必要はありません。まずは、自分が答えようとしていることが、相手の困り事と合っているかを確かめます。

🍀 話を相手に戻す、小さな返し方

浮かんだ助言を、すぐ口にしない

助言や体験談が浮かぶこと自体は自然です。そのときは、心の中で「これは少し後でも話せるかな」と考えてみます。

相手がまだ続けそうなら待つ。区切りがついたら、たとえば次のように返します。

  • 「うん、その後どうなったの?」
  • 「今、いちばん困っているのはどのあたり?」
  • 「何度も説明しているんだね」

質問だけが聴き方ではありません。相づちや、相手が話したことを短く返す方法もあります。黙り続けることが正解というわけでもなく、相手の様子を見ながら応じます。

遮ってしまったら、そこで戻ればいい

途中で自分の話を始めてから、気づくこともあります。

「私のときはね……。あ、ごめん、途中だったね。続きを聴かせてもらってもいい?」

相手が「もういい」と言うなら、無理に話を再開させません。「分かった。話したくなったら声をかけてね」と区切ることもできます。

一度も遮らないことを目指すより、気づいたときに話の中心を戻せることを練習してみましょう。

🍀 練習:自分の経験を話す前に、何と返す?

同僚が言いました。

「新しい担当になってから、帰宅しても仕事のことを考えてしまうんだ」

あなたにも似た経験があり、「私もそうだった。慣れれば大丈夫」と言いたくなりました。

ここで、自分の経験を話す前の返答を一つ書いてみてください。次の例を見る前に、短い一文で考えてみましょう。

返答例と、その理由

例1:「家に帰ってからも、仕事が頭から離れないんだね」

相手が話した内容にとどまり、もう少し話せる余地を残しています。

例2:「どんなことが気になるの?」

困っている内容を知ろうとする質問です。ただし、相手がまだ話している途中なら、まず続きを待ちます。

例3:「今は話を聴くほうがいい? 一緒に考えるほうがいい?」

相手が求める関わり方を確かめる方法です。返答に迷ったときに使えますが、毎回この二択を尋ねる必要はありません。

自分の経験が役立ちそうなら、少し聴いた後で「似た経験があるけれど、聞いてみたい?」と尋ねることもできます。話した後は、「今の状況にも合いそう?」と相手に戻しましょう。

🍀 家族との会話や、時間がないときはどうする?

「自分の話を足す前に聴く」は、家でも同じ

家族が「今日、予定どおりに進まなくて疲れた」と話したとき、「私も忙しかった」と返したくなることがあります。

自分も話したいなら、その気持ちをなくす必要はありません。まず「何があったの?」と少し聴いてから、「私の今日のことも、後で聞いてもらっていい?」と頼む方法もあります。

聴き役だけを一人が引き受け続ける必要はありません。

聴く余裕がなければ、時間を相談する

締め切り前など、今は聴けないときもあります。

「今は手が離せないんだ。昼休みなら少し聴けるけれど、どうかな?」

実際に確保できる時間を伝え、相手にも選んでもらいます。

また、事故の危険や、直ちに対応が必要な業務連絡があるときは、最後まで待つ練習を優先しません。「途中でごめん、先に安全の確認をしたい」と伝え、必要な対応をしてください。

🍀 まとめ:一度だけ、助言の前に一呼吸

次に誰かと話すとき、最初の一分ほどを目安に、自分の経験や解決策を急いで出さず、相手の話を聴いてみましょう。

厳密に時間を測る必要はありません。相手から助言を求められたら応じて構いませんし、録音も必要ありません。

会話の後に、次の三つを振り返ります。

  • 相手が話している途中で、自分の話に切り替えなかったか
  • 話したくなったとき、相手に関わる一言を返せたか
  • 遮ったことに気づいたら、続きを聴く姿勢に戻れたか

今回は「気の利いた助言ができたか」ではなく、「相手が話したかったことを知る前に、答えを決めなかったか」が目安です。

うまくいかなかった場面があれば、その一言だけを書き換えてみてください。それも、次の会話につながる練習になります。


参考資料:相手を理解しようとする姿勢や、一方的な助言を急がない考え方は、MINT:Understanding Motivational Interviewingを参考にしています。本記事は日常会話の基礎練習であり、専門的な動機づけ面接の技能習得を保証するものではありません。

傾聴の基礎:続けて練習する

前の回:第1回|共感すると同意したことになる?傾聴で「理解」と「賛成」を分ける練習

次の回:第3回|答えを誘導しない質問とは?相手の考えを聴く傾聴の練習

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雑食系学習者
専門にとらわれず、興味のタネを見つけては掘り下げる「雑食系学習者」。 文系・理系の垣根を越え、心理学・哲学・教育・社会理論などをつまみ食いしながら、「人間を理解すること」をテーマに独自の視点で探究を続けています。

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