相手の言葉を言い換えるには?意味を足さずに聴く傾聴の練習
傾聴の基礎 第4回
相手のことを知りたくて、「いつ?」「誰が?」「それで?」と質問を重ねていたら、面接のような会話になってしまった。
反対に、何を尋ねればいいか分からず、相づちだけで終わってしまうこともあるかもしれません。
そんなとき、相手が話したことを短く言い換えて返す方法があります。新しい情報を聞き出す前に、「こう受け取ったよ」と示す返し方です。
今回の目標は、相手が言っていない理由や評価を加えず、一つの発言を短く言い換えられることです。 会話例はすべて練習用の架空例です。
🍀 前回の振り返り:広く尋ねれば、よい質問?
「どうすれば、もっと責任感を持てる?」は、自由に答えられる形なので、相手の考えを聴く質問といえるでしょうか。
この質問には、相手に責任感が足りないという決めつけが含まれています。 質問の形だけでなく、望む答えや評価を先に置いていないかが大切でした。
今回は、質問を加える代わりに、すでに相手が話してくれたことへ目を向けます。
🍀 言い換えは、理解した内容を短く返すこと
意味を変えずに返す
同僚が、次のように話しました。
「確認を頼むたびに返事が来るまで時間がかかって、次の作業に進めないんだ」
たとえば、こう返せます。
「確認の返事を待つ間、作業が止まってしまうんだね」
言葉は少し変わりましたが、「確認待ちで先へ進めない」という話の中心は残っています。
一方、次の返し方ではどうでしょうか。
「相手が仕事を後回しにしているから、腹が立つんだね」
相手が後回しにしているかどうかも、本人が腹を立てているかどうかも、まだ話されていません。言い換えたつもりでも、理由や気持ちを付け足しています。
まずは、本人が話した範囲にとどめてみましょう。気持ちを推測して確かめる練習は、次回に扱います。
同じ言葉を使ってもいい
言い換えは、別の表現を探す言葉のテストではありません。「次の作業に進めないんだね」と、相手の言葉をそのまま使っても構いません。
ただ、すべての語尾を機械的に繰り返すと、聴かれている感じがしないこともあります。重要そうな部分を一つ選び、会話に合う長さで返してみます。
🍀 質問が続く会話と、言い換えを挟む会話
詳細を次々に尋ねた場合
同僚:「会議が続く日は、自分の作業が夕方までできなくて」
自分:「会議は何件? 一件何分? 作業の締め切りは?」
同僚:「ええと……」
情報を集める必要がある場面なら、こうした確認にも役割があります。ただ、今は相手が何を話したいのか、まだ分かりません。
聴き取った内容を返した場合
同僚:「会議が続く日は、自分の作業が夕方までできなくて」
自分:「会議が続く日は、作業に取りかかるのが夕方になるんだね」
同僚:「そう。それで、集中したい時間にはもう疲れてしまって」
この例では、短く返した後に、相手が続きを話しています。実際には、必ず話が広がるとは限りません。返したら少し待ち、続きを話すかどうかも相手に任せます。
🍀 練習:意味を足さずに、短く返してみる
次の言葉を、一文で言い換えてください。
「打ち合わせで担当が決まったと思ったのに、後から別の人に頼んだと言われて、結局だれがやるのか分からなくなった」
先に自分の一文を作ってから、例と比べてみましょう。
言い換え例と、その理由
例1:「担当が決まったと思っていたのに、今はだれが担当か分からないんだね」
決まったと思ったことと、現在の不明確さの両方を残しています。
例2:「後から別の人に頼んだと聞いて、担当が分からなくなったんだね」
分からなくなった経緯に焦点を当てています。すべての情報を入れなくても、話の意味が変わらなければ構いません。
「周りがいい加減だから困っているんだね」と返すと、周囲への評価を加えることになります。「担当変更が嫌なんだね」も、変更そのものを嫌がっているかはまだ分かりません。
書いた一文を見て、「この部分は本人が話したことか、自分が考えたことか」を分けてみてください。
🍀 家族の話でも、理解が違ったら直せばいい
家族が「予定を急に変えられると、用意していたものが無駄になってしまう」と話したとします。
自分:「予定が変わると、準備したものを使えなくなるんだね」
もし「使えるけど、準備の時間がもったいないの」と返されたら、そこで修正できます。
「物のことより、準備にかけた時間のことなんだね」
正しく言い換えたつもりでも、違うことはあります。言い返したり、最初の解釈を押し通したりせず、相手の訂正を手がかりにします。
「これで合っている?」と毎回確認する必要はありませんが、内容が複雑なときは「こういう理解で合っているかな」と尋ねてもよいでしょう。
🍀 まとめ:質問を一つ増やす前に、短く返してみよう
次の会話で一度だけ、相手の発言の中心を短く返してみてください。事実確認や緊急の対応が必要なときまで、言い換えを優先する必要はありません。
終わったら、三つを振り返ります。
- 相手が話していない理由・評価・気持ちを足さなかったか
- 言葉を変えることより、意味を保つことを大切にできたか
- 相手に訂正されたら、理解を修正できたか
自分の返答が長くなったら、一番大切だと思った部分だけに絞って書き直してみましょう。
次回は、言葉の内容に加えて、気持ちを「決めつけずに確かめる」練習をします。
参考資料:相手の話を聴き取り、理解を返すことは、MINT:Understanding Motivational Interviewingが示す基本技能の一つです。本記事では、その入口として日常会話の短い言い換えを練習します。専門的な技能評価を行うものではありません。
傾聴の基礎:続けて練習する
前の回:第3回|答えを誘導しない質問とは?相手の考えを聴く傾聴の練習
次の回:第5回|相手の感情を決めつけない聴き方|気持ちを確かめる傾聴の練習
